第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
ギリッとリーマスは唇を噛み締めていた。
後悔しているかのようだが、悔しそうにもしていて、複雑な心境が渦まているのが目に見える。
そんなリーマスにアリアネは駆け寄りたかったが、今も尚ハリーは彼女の腕を掴んでいた。
未だにハリーは警戒しているのだ。
リーマスのことを、警戒していて、アリアネが近寄ろうとするのを止めている。
「ダンブルドアの信頼が私にとってはすべてだったのに。ダンブルドアは少年の私をホグワーツに入れてくださったし、大人になっても、全ての社会から締め出され、正体が正体なのでまともな仕事に就けない私に、職場を与えて下さった。だから、私はシリウスが学校に入り込むのに、ヴォルデモートから学んだ闇の魔術を使っているに違いないと思いたかったし、『アニメーガス』であることは、それとは何の関わりもないと自分に言い聞かせた。……だから、ある意味はスネイプの言うことは正しかったわけだ」
その時、シリウスの眉がピクッと動いた。
「スネイプだって?」
スネイプの名を聞いたシリウスが、鋭い声で聞きながら初めてスキャバーズから視線を外してリーマスを見上げる。
「スネイプが、何の関係がある?」
「シリウス、スネイプがここにいるんだ。あいつもここで教えているんだ」
シリウスはその言葉に驚いた表情を見せた。
そんなシリウスから視線を外したリーマスが、アリアネ、ハリー、ロン、ハーマイオニーを見る。
「アリアネは知っているかもだけど、スネイプ先生は私達と同期なんだ。私が『闇の魔術に対する防衛術』の教職に就くことに、先生は強硬に反対した。ダンブルドアに、私は信用できないと、この1年間言い続けていた。スネイプにはスネイプなりの理由があった。……それはね、このシリウスが仕掛けた悪戯で、スネイプが危うく死にかけたんだ。その悪戯には私も関わっていた」
するとシリウスが嘲笑うかのように言った。
「当然の見せしめだったよ。コソコソ嗅ぎ回って、我々のやらうとしていることを詮索して……。我々を退学に追い込みたかったんだ……」
「セブがそんなことを……?」
「アリアネ、君はスネイプを親しく呼んでいるのか?」
シリウスの落窪んだ目がアリアネを捉えた。
「……親しいからよ。あの人は、私をずっと見守り続けていたから」
「アイツが、君を!」