第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
楽しげにコロコロと笑うリーマスにアリアネは目を見開かせてしまう。
思い出に浸り、語る彼の表情はあまり見たことがなかった。
「シリウスとジェームズとウィリアスは大型の動物に変身していたので、狼人間を抑制できた。ホグワーツで、私達ほど校庭やホグズミードの隅々まで詳しく知っていた学生はいないだろうね……こうして、私たちが『忍びの地図』を作り上げ、それぞれのニックネームで地図にサインした。シリウスはパッドフット、ピーターはワームテール、ウィリアスはレッドベアー、ジェームズはプロングズ」
「どんな動物に──?」
ハリーは父親がどんな動物に変身していたのか気になっていた。
だからリーマスに質問しようとしたが、それはハーマイオニーの言葉によって遮られた。
「それでもまだとっても危険だわ!暗い中を狼人間と走り回るなんて!もし狼人間がみんなをうまく撒いて、誰かに噛み付いたらどうなったの?」
「それを思うと、いまでもぞっする」
リーマスは傷付いた表情を浮かべながらも、小さくそう呟いた。
「あわや、ということがあった。なんかいもね。あとになってみんな笑い話にしたものだ。若かったし、浅はかだった。自分たちの才能に酔っていたんだ」
彼の表情から楽しそうなものが消えた。
「もちろん、ダンブルドアの信頼を裏切っているという罪悪感を、私は時折感じていた。……ほかの校長なら決して許さなかっただろうに、ダンブルドアは私がホグワーツに入学することを許可した。私と周りの者の両方の安全のらために、4人の学友を非合法の『アニメーガス』にしてしまったことを、ダンブルドアは知らなかった。しかし、んなで翌月の冒険を計画するたびに、私は都合よく罪の意識を忘れた。そして、私はいまでもその時と変わっていない」
リーマスの声と顔が強ばった。
その声は自己嫌悪が混じっていて、リーマスはちらりとシリウスの方へと視線を向ける。
「この1年というもの、私は、シリウスが『動物もどき』だとダンブルドアに告げるべきかどうか迷い、心の中で躊躇う自分と闘ってきた。しかし、告げはしなかった。なぜかって?それは、私が臆病者だからだ。告げれば、学生時代に、ダンブルドアの信頼を裏切っていたと認めることになり、私が他の者を引き込んだと認めることになる」