第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
アリアネはその言葉に驚いた。
あのトンネルが、リーマスのために作られていたなんて思っていなかったから。
「1ヶ月に1度、私は城からこっそり連れ出され、変身するためにここに連れてこられた。私が危険な状態にある間は誰も私に出会わないようにと、あの木がトンネルの入口に植えられた」
誰もがリーマスの話にのめり込んでいた。
その間もスキャバーズは逃げ出そうとキーキーと鳴いていたが、ロンが手放そうとはしなかった。
「その頃の私の変身ぶりといったら……それは恐ろしいものだった。狼人間になるのはとても苦痛に満ちたことだ。噛むべき対象の人間から引き離され、代わりに私は自分を噛み、引っ掻いた。村人はその騒ぎや叫びを聞いて、とてつもなく荒々しい霊の声だと思った。ダンブルドアはむしろ噂を煽った……いまでも、もうこの屋敷が静かになって何年も経つのに、村人は近づこうともしない」
アリアネは脳裏に、リーマスが変身していた姿を思い出していた。
自分を引っ掻き、傷つけて血だらけになっている姿は幼い頃のアリアネにはかなりのショックを与えた。
(周りを襲わない為に、ああして……自分を傷付けていたのね。だから何時も人間に戻った時に傷だらけだった)
その度にアリアネは泣いて泣いて心配した。
だが狼人間だからといって、アリアネはリーマスを怖がることはしなかった。
狼人間だとしてもリーマスは大好きな名付け親だったから。
「しかし、変身することだけを除けば、人生でたんなに幸せだった時期はない。生まれて初めて友人が出来た。4人の素晴らしい友が。シリウス・ブラック、ピーター・ペティグリュー、それから言うまでもなく、ハリー、君のお父さんのジェームズ・ポッターとアリアネのお父さんのウィリアス・フリートだ」
「僕の父さん……」
「さて、4人の友人が、私が月に一度姿を消すことに気づかないはずはない。私は色々言い訳を考えた。母親が病気で、見舞いに帰らなければならなかったとか……。私の正体を知ったら、とたんに私を見捨てるのではないかと、それが怖かったんだ。しかし、4人ははーまあ、君と同じように、本当のことを悟ってしまった……」
リーマスは苦笑を浮かべていた。
だけど何処か懐かしそうにしていて、ゆっくりと話を続ける。