第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
6人は一斉にドアを見つめる。
するとリーマスがドアの方へと近寄り、階段の踊り場を見つめた。
「誰もいない……」
「ここはやっぱり呪われてるんだ!」
ロンは顔を真っ青にさせながら叫んだ。
「そうではない。『叫びの屋敷』はけっして呪われてはいなかった……村人がかつて聞いたという叫びや吠え声は、私の出した声だ」
「リーマスの声……?」
ふと、アリアネはある事を思い出した。
こっそりと彼の祖父の家から抜け出して、リーマスの元に戻った時、彼が狼人間に変身する所を見た時だ。
彼は叫び声をあげていたのを思い出した。
「話は全てそこから始まる。私が人狼になったことから。私が噛まれたりしなければ、こんなことはいっさい起こらなかっただろう……そして、私があんなにも向う見ずでなかったなら……」
リーマスは何処か疲れた様子だった。
その様子にアリアネはリーマスに駆け寄ろうとしたが、ハリーの腕がそれを制止させる。
「噛まれたのは私なまだ小さい頃だった。両親は手を尽くしたが、あの頃は治療法がなかった。スネイプ先生が私に調合してくれた魔法薬は、ごく最近発明されたばかりだ。あの薬で私は無害になる。わかるね。満月の夜の前の1週間、あれを飲みさえすれば、変身しても自分の心を保つことができる……。自分の事務所で丸まっているだけの、無害な狼でいられる。そして再び月が欠けはじめるのを待つ」
リーマスはゆっくりと説明を始めた。
その説明をアリアネ達は静かに耳にしていく。
「トリカブト系の脱狼薬が開発されるまでは、私は月に一度、完全に成熟した怪物に成り果てた。ホグワーツに入学するのは不可能だと思われた。他の生徒の親にしてみれば、自分の子供を、私のよつな危険なものにさらしたくないはずだ。しかし、ダンブルドア先生が校長二なって、私に同情してくださった。きちんと予防措置を取りさてすれば、私が学校に来ては行けない理由などないと、ダンブルドアはおっしゃった……」
リーマスはため息を吐きだすと、アリアネとハリーを真っ直ぐに見つめる。
「何ヶ月も前に君達に言ったと思うが、『暴れ柳』は、私がホグワーツに入学した年に植えられた。本当は言うと、私がホグワーツに入学したから植えられたのだ。この屋敷は──。ここに続くトンネルは、私が使うために作られた」