第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
アリアネはスキャバーズを見下ろした。
12年間生きていたというスキャバーズは他のネズミよりは長生きだ。
だがこのネズミが人間だというのかと眉間に皺を寄せる。
すると、ハーマイオニーが身体を震わせながら冷静を保とうとしながらリーマスに話しかけた。
「でもルーピン先生……スキャバーズはペティグリューのはずがありません。……そんなこと、あるはずないんです。先生はその事をご存知のはずです……」
「どうしてかね?」
「だって……だって、もしピーター・ペティグリューが『アニメーガス』なら、みんなその事を知っているはずです。マクゴナガル先生の授業で『動物もどき』の勉強をじした。その宿題で私、『動物もどき』を全部調べたんです。魔法省が動物に変身できる魔法使いや魔女を記録していて、何に変身するかとか、その特徴などを書いた登録簿があります。──私、登録簿で、マクゴナガル先生がのっているあのを見つけました。それに、今世紀にはたった7人しか『動物もどき』がいないんです。ペティグリューの名前はリストに載っていませんでした」
ハーマイオニーはそう言い終えると、アリアネへと視線を向けた。
「アリアネも見たわよね、登録簿。そこにピーター・ペティグリューの名前は無かったわよね」
「え、ええ……無かったわ……。リーマス、スキャバーズがピーター・ペティグリューなのは有り得ないわ。登録簿に名前が無かったんだから……」
するとリーマスは突然笑いだした。
「またしても正解だ、ハーマイオニー、アリアネ。でも魔法省は、未登録の『アニメーガス』が4匹、ホグワーツを徘徊していたことを知らなかったのだ」
「その話をみんなに聞かせるつもりなら、リーマス、さっさと済ませてくれ。私は12年も待った。もうそう長くは待てない」
シリウスは何処か苛立ちを募らせたように呟いた。
そして同時に何かに焦っている様子であり、アリアネはシリウスを見ながら目を細める。
何をそんなに待っているのだろうか、と思いながら。
「わかった……だが、シリウス、君にも助けてもらわないと。私はそもそもの始まりのことしか知らない……」
その時である。
背後で大きく刻む音が聞こえて、全員がそちらへと振り向いた。
なんと独りでにベッドルームの扉が開いたのである。