第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
「1人だろ!」
「リーマス。ブラックに引き摺られたのはロンだけよ……ロン以外いなかった」
「ロン、アリアネ、違うね」
リーマスは歩くのを辞めてから、ロンへと視線を向けた。
その瞳は警戒したような疑っているような、戸惑いにも見えるものであり、見つめられたロンは後退りをする。
「ネズミを見せてくれないか?」
「なんだよ?スキャバーズに何の関係があるんだい?」
「大ありだ。頼む。見せてくれないか?」
ロンはその言葉に躊躇った。
だが、ローブに手を突っ込んでから必死に逃げ出そうとしているスキャバーズの尻尾を掴んでから引きずり出す。
リーマスはロンに足早に近付いた。
そしてスキャバーズをじっと見つめてから、目を見開かせる。
「なんだよ?僕のネズミがいったいなんの関係があるって言うんだ?」
「それはネズミじゃない」
それまで沈黙を貫いていたシリウスが言葉を発した。
「どういうこと?こいつはもちろんネズミだよ」
「いや、ネズミじゃない。こいつは魔法使いだ」
リーマスが首を振りながらロンの言葉を否定する。
「『アニメーガス(動物もどき)』だ。名前はピーター・ペティグリュー」
突拍子もない言葉に、アリアネとハリー、ロン、ハーマイオニーは驚いてしまった。
ピーター・ペティグリューと言えば、12年前にシリウスが殺害した者である。
「ピーター・ペティグリューですって……?」
「2人ともどうかしてる」
ロンは驚きの中で呆れたように呟いた。
そしてハーマイオニーも呟く。
「馬鹿馬鹿しい!」
「ピーター・ペティグリューは死んだんだ!コイツが12年前に殺した!」
ハリーはシリウスへと指をさした。
そう、ハグリッド達が酒場で話していたのだ。
12年前にシリウスがピーター・ペティグリューを殺したのだと。
「そうよ。ピーター・ペティグリューはお前が殺したじゃない!」
アリアネがそう叫ぶと、シリウスが顔を痙攣させた。
「殺そうと思った。だが、小賢しいピーターめに出し抜かれた……今度はそうさせない!」
シリウスは突如、ロンが持っているスキャバーズへと襲いかかった。
するとロンの折れた足にシリウスに重みがのしかかり、ロンが痛みで悲鳴をあげる。
「ロン!」
「シリウス、よせ!」