第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
「地図だよ」
リーマスは苦笑しながらそう答えた。
「『忍びの地図』だ。事務所で地図を調べていたんだ」
「使い方を知ってるの?」
ハリーは何故、リーマスが『忍びの地図』の使い方を知っているのかと驚いていた。
あれの使い方はリーマスは知らないはずと思っていたが、アリアネは直ぐに思い出す。
リーマスが地図を没収した時に、あれが地図だと知っていると本人が言っていたのだ。
使い方を知っていてもおかしくは無い。
「もちろん、使い方は知っているよ。私もこれを書いた一人だ。私はムーニーだよ。──学生自体、友人は私のことをそういう名で呼んだ」
「先生が、書いた──?」
「リーマスが、あの地図のムーニーなの?」
「ああ。そんなことより、私は今日の夕方、地図をしっかり見張っていたんだ。というのも、ハリーとアリアネ、ロン、ハーマイオニーが城をこっそり抜け出して、ヒッポグリフの処刑の前に、ハグリッドを訪ねるのではないかと思ったからだ。思った通りだった。そうだね?」
リーマスは言葉を続けながら、行ったり来たりと部屋の中を動いた。
その度に部屋に積もっている埃がふわりと浮かぶ。
「君のお父さんの『透明マント』を着ていたかもしれないね、ハリー」
「どうして『マント』のことを?」
「ジェームズがマントに隠れるのを何度見たことか……。要するに、『透明マント』を着ていても、『忍びの地図』に現れるということだよ。私は君達が校庭を横切り、ハグリッドの小屋に入るのを見ていた。20分後、君達はハグリッドの所を離れ、城に戻り始めた。しかし、今度は君たちの他に誰かが一緒だった」
リーマスの言葉に、アリアネとハリーは驚愕した。
あの時そばにいたのは自分たちだけであり、誰も居なかったのだから。
「誰かが一緒……そんな、私達だけだったわ」
「そうだ。僕たちだけだった!」
「私は目を疑ったよ。地図がおかしくなったかと思った。あいつがどつして君達と一緒なんだ?」
「誰も一緒じゃなかった!」
ハリーの叫びをリーマスは無視して言葉を続けた。
「すると、持つ1つの点が見えた。急速に君達に近づいている。シリウス・ブラックと書いてあった。……ブラックが君たちにぶつかるのが見えた。君達の中から2人を『暴れ柳』に引きずり込むのを見た……」