第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
「違うわ。私がもう少し賢かったら、皆に貴方のこと話してたわ!」
「しかし、もう、みんな知ってる事だ。少なくとも先生方は知っている」
その言葉にアリアネとシリウス以外は目を見開かせて驚いていた。
リーマスが狼人間と知っておいてなお、先生方は黙認していたということに。
「ダンブルドアは、狼人間と知っていて雇ったていうのか?正気かよ?」
「先生の中にもそういう意見があった。ダンブルドアは、私が信用出来る者だと、何人かの先生を説得するのにずいぶんご苦労なさった」
「そして、ダンブルドアは間違ってたんだ!先生はずっとこいつの手引きをしてたんだ!」
ハリーはシリウスを指さして叫んだ。
シリウスは天蓋付きベッドの方に歩いていき、震えている手で顔を覆いながらベッドに身を沈めていた。
「理由が、あるんじゃないの……」
「アリアネ?」
「リーマスが、私やハリーの命を狙っているなんてそんなわけ……ないじゃない。ブラックを手引きしてはいないと思うわ。そう、信じたい……」
アリアネは震える声でリーマスへと手を伸ばそうとしたが、それをハリーに止められた。
ハリーはがっしりとその手でアリアネの腕を掴んで、自分の方へと引っ張り、リーマスから引き離した。
「駄目だ、アリアネ!情に流されちゃ駄目だ。先生はブラックの手引きをした。そうとしか考えられないだろう!?」
「でも……」
「駄目だ!」
ハリーの声にアリアネはビクッと身体を跳ねさせた。
リーマスを信じたい気持ちと、ブラックを抱きしめたリーマスに対しての怒りや疑問の気持ちで揺らいでしまう。
「私はシリウスの手引きはしていない。わけを話させてくれれば、説明するよ。ほら──」
リーマスは4人から奪っていた杖を1本ずつ、アリアネ達へとそれぞれに放り投げて返した。
それを受け取ったアリアネ、ハリー、ロン、ハーマイオニーは唖然とする。
そしてリーマスは自分の杖をベルトに挟み込む。
「ほーら。君達には武器がある。私たちは丸腰だ。聞いてくれるかい?」
「ブラックの手助けをしていなかったていうなら、こいつがここにいるって、どうしてわかったんだ?」
「そうよ……。なんでここに来たの、リーマス。なんでここにブラックが……あいつがいるとわかったの?」