第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
飛び込んできたリーマスは、床に横たわるロンとドアの傍で立ち尽くすハーマイオニーへと視線をやる。
そして杖をシリウスに向けて突っ立っているハリーと、シリウスの胸ぐらを掴んで杖を向けているアリアネへと視線を向けて、最後にアリアネとハリーの足元で血を流して倒れているシリウスへと視線を移した。
「エクスペリアームス(武器よ去れ)!」
突如、リーマスは呪文を唱えてアリアネ、ハリー、ロン、ハーマイオニーの杖を奪った。
「リーマス!?」
アリアネは杖を奪われた事に目を見開かせて、シリウスから飛び退くように離れた。
せっかくシリウスを殺せる、両親の仇を取れるチャンスを邪魔されてしまった事に驚いてしまっていた。
「シリウス、あいつはどこだ?」
すると、リーマスはまるで感情を押し殺すかのようにシリウスに訊ねた。
その質問にアリアネとハリーは困惑しながら、リーマスを見つめる。
「リーマス?」
彼はアリアネに対して、困惑したような何とも言えない表情を向けてから、シリウスへと視線を向ける。
シリウスは倒れたまま、暫く動かなかったが、手をゆっくりとあげてロンへと指をさした。
どういう意味なのか。
アリアネとハリーは困惑していて、指をさされたロンもまた困惑していた。
「しかし、それなら……なぜいままで正体現さなかったんだ?もしかしたら……」
リーマスは急に目を見開かせて、シリウスを見つめた。
まるでシリウスを通り越して何かを見ているようで、アリアネはそんな彼に困惑しながらシリウスから距離を取る。
「──もしかしたら、あいつがそうだったのか……もしかしたら、君はあいつと入れ替わりになったのか……私に何も言わずに?」
シリウスがゆっくりと頷く。
「ルーピン先生。いったいなにが……?」
その後の言葉をハリーは声に出せなかった。
何せリーマスはシリウスに向けていた杖を下ろして、彼の手を取って助け起こしたのだ。
そして感動の再会のように抱きしめあっている。
「リーマス……?どういうことなの……?なんで……」
「なんてことなの!」
アリアネの困惑した声をかき消すように、ハーマイオニーが叫んだ。
その叫び声にシリウスとリーマスがハーマイオニーへと視線を向ける。
「先生は、先生は」
「ハーマイオニー」