第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
アリアネはそれを見てから、シリウスの顔へと杖を向けて、ハリーはシリウスに馬乗りになっていた。
「ハリー、アリアネ、私を殺すのか?」
「ええ、そうよ。殺すに決まってるじゃない」
「お前は僕とアリアネの両親を殺した」
シリウスの左目の周りは黒く痣になっていて、鼻血をたらりと垂らしている。
黒く濁った目は2人を見つめていた。
「否定しない。しかし、君達が全てを知ったら──」
「すべて?」
「そんなの全て知ってるわよ!お前が、私とハリーの両親をヴォルデモートに売ったことも全て!知っているわ!お前の口から聞かなくても!」
「聞いてくれ、アリアネ」
その声はとても優しかった。
シリウスのその声は、夢で聞こえた優しく温もりがあるものであり思わずアリアネは身体を跳ねさせる。
「聞かないと、君達は後悔する……君達は分かっていないんだ」
「お前が思っているより、僕とアリアネはたくさん知っている。お前はあの声を聞いたことがないんだ。僕の母さんとアリアネのお母さんが、ヴォルデモートが僕を殺すのを止めようとして……。お前がやったんだ……おまえが……」
その時、クルックシャンクスがシリウスの胸元に飛んできた。
そしてシリウスの心臓の辺りを陣取り、動こうとしない。
「クルックシャンクス、どきなさい!」
アリアネがそう叫ぶが、クルックシャンクスは動こうとはしない。
シリウスはクルックシャンクスを見て、数回瞬きをしてから『どけ』と短く低く言うがクルックシャンクスは動かなかった。
アリアネはクルックシャンクスをどかそうと、身体を押したがどかない。
これではシリウスに攻撃したら、クルックシャンクスに当たってしまう。
「クルックシャンクス、お願いだからそこをどいて!」
そう叫んだ時だった。
下から足音が聞こえてきたのである。
誰かの足音に、全員が動きを止めた時、ハーマイオニーが叫んだ。
「ここよ!私たち、上にいるわ!シリウス・ブラックよ!早く!」
ハーマイオニーの叫び声にシリウスは驚いて身動きすると、クルックシャンクスが落ちそうになった。
その瞬間、アリアネはシリウスに攻撃しようと杖を向けた時だ。
バタンをドアが勢いよく開いて、外から蒼白な顔をしたリーマスが飛び込んで来たのである。