第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
ロンの片足だけしか見えない。
助け出したいが、暴れ柳のせいで近づく事が出来ない。
その時、ロンは足をくの字に曲げて根元に引っ掛け食い止めていた。
だがやがて、パシッと銃声のような音が聞こえた……ロンの足が折れたのだ。
そしてロンの足が見えなくなった。
「ロン、ああ……そんな!」
「ハリー、アリアネ、助けを呼ばなくちゃ!」
「ハーマイオニー!貴方、怪我をしてるじゃない!」
暴れ柳の枝で切ったのだろう。
ハーマイオニーの肩からは血が流れていて、アリアネは慌ててローブのポケットからハンカチを取り出した。
そして丁寧で素早い手つきで、肩を手当する。
「ダメだ!あいつはロンを食ってしまうほど大きいんだ。そんな時間はない」
「でも、誰か助けを呼ばないと、絶対あそこには入れないわ──」
暴れ柳の枝がまた3人を襲おうとする。
それを避けながら、ハリーは根元にある大きな隙間を見た。
「あの犬が入れるなら、僕たちにもできるはずだ」
ハリーは襲ってくる枝を避けながら飛び回っていた。
だが体力の限界があり、徐々に動きが鈍くなってきている。
「ああ、誰か、助けて……」
ハーマイオニーがそう呟いた時だった。
どこからともなく、クルックシャンクスが現れて、殴り掛かる大枝の間を蛇のようにすり抜けて、両前足を木の節の1つに乗せる。
突如、あれだけ暴れていた暴れ柳がピタリと動きを止めたのである。
その事にアリアネ達は驚きで目を見開かせた。
「クルックシャンクス!この子、どうしてわかったのかしら?」
「あの犬の友達なんだ。僕、2匹が連れ立っているところを見たことがある。行こう、アリアネとハーマイオニーも杖を出しておいて──」
木の幹に近寄り、3人が根元の隙間にたどり着く前にクルックシャンクスと何処からか飛んできたジークが先に滑り込んでいった。
「あ、ジーク!あの子、一体どうしたのかしら?スキャバーズを襲ったり、隙間に入って言ったりして……」
「そういえば、ジークもあの犬とクルックシャンクスと一緒に居たのを僕、見たよ」
「ジークが!?」
アリアネは驚愕しながらも、先に隙間に滑り込んだハリーの後に続いた。
中は狭い土のトンネルとなっていて、クルックシャンクスが少し先を歩いている。