第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
追いかけた先では、ロンの怒鳴り声が聞こえたきた。
クルックシャンクスとジークに怒鳴りつけているようで、彼の声は響いてくる。
「スキャバーズから離れろ、離れるんだ!スキャバーズこっちへおいで」
その途端、ドサッという音が聞こえた。
「捕まえた!とっとと消えろ、いや猫とフクロウめ!」
アリアネとハリーとハーマイオニーは、危うく腹這いになっていたロンに躓く所だった。
ロンのギリギリ手前で止まった3人は、ロンがスキャバーズをポケットに入れているのを見た。
「ロン、早く、マントに入って──」
ハーマイオニーはぜいぜいと、息を切らしながら言う。
「ダンブルドアと大臣、みんなもうすぐ戻ってくるわ」
だが、4人がマントを被る前に何か巨大な黒いものが足音を立てながらこちらへとやってきた。
そして何かがこちらに向かっ飛んだ。
犬だ。
アリアネが何度も目撃して、ハリーも目撃したあの黒犬が居たのだ。
「犬!?」
ハリーが咄嗟に杖に手をかけたが、遅かった。
黒犬は大きくジャンプして、前足でハリーの胸を蹴ったのだ。
そして黒犬はロンに襲いかかり、彼の腕を噛んだのである。
「ロン!辞めなさい、ロンを離しなさい!」
アリアネとハリーが黒犬の毛を掴んだが、それを振り切り、黒犬はロンをやすやすと引き摺って行ってしまう。
それを追いかけようとした途端、アリアネとハリーは何かに横っ面を叩かれた。
「キャッ!?」
近くではハーマイオニーが痛そうに悲鳴をあげている。
暗くて何が起きているのか分からず、アリアネとハリーは杖を取りだして呪文を叫んだ。
「「ルーモス(光よ)!」」
明るく照らされたのは、太い木の幹。
なんとアリアネ達はスキャバーズ達を追いかけるうちに、『暴れ柳』の樹下に入り込んでいたのである。
『暴れ柳』は強風に煽られるかのように、枝を軋ませながら前に後ろにと枝を叩きつけている。
「ロン!」
気の根元には黒犬が立っていた。
そして根元に大きく開いた隙間から、ロンを頭から引きずり込もうとしている。
ロンは抵抗しているが、どんどん引きずられて見えなくなってしまった。
「ロン!」
「ロン!ロン!!」
アリアネとハリーは追いかけようとしたが、『暴れ柳』の強烈な叩きが襲いかかってきて、近づけなかった。