第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
アリアネはハーマイオニーの背中を撫でながら、ゆっくりと息を吸わせる。
「本当にどうして、こんなことが、出来るっていうの?」
「あの人たちには、バックビークの気持ちやハグリッドの気持ちを理解出来ないのよ……マルフォイの言いなりになるぐらいの弱い人間のくせになのに……」
アリアネは畑の方へと視線を向けてから、ぐっと唇を噛み締めた。
目頭が熱くなるのを感じながら、畑から視線を逸らして泣きそうになるのを我慢する。
「行こう」
4人はマントに隠れながらゆっくりと歩く。
空は急激に暗くなり、もう足元も暗くて見えづらくなっている。
「スキャバーズ、じっとしてろ」
未だにスキャバーズは暴れていた。
キーキーと鳴きながら、逃げ出そうとロンの手から逃れようとしている。
「いったいどうしたんだ?このバカネズミめ。じっとしてろ──アイタッ!こいつ噛みやがった!」
「ロン、静かにして!ファッジが今にもここにやってくるわ」
「こいつめ、なんでじっと、してないんだ」
スキャバーズは何かに怯えている。
「まったく、こいつ、いったいどうしたんだろう?」
その時、ハリーとアリアネは見た。
地を這うようにこちらにやって来るクルックシャンクスと、バタバタと羽を動かしているジークを。
「クルックシャンクス!だめ。クルックシャンクス、あっちに行きなさい!行きなさいったら!」
「ジーク!こちらに来ちゃダメよ!向こうに行きなさい!フクロウ小屋に戻りなさい!」
だが、クルックシャンクスもジークを飼い主たちの言うことは聞かずにジリジリと迫ってくる。
「スキャバーズ、ダメだ!」
ロンが叫んだ途端、スキャバーズはロンの手から逃れて地面に落ちてしまった。
そしてスキャバーズは走り出して、クルックシャンクスも走り出し、ジークもひとっ飛びしながら追いかける。
「スキャバーズ!」
するとロンはアリアネとハリーとハーマイオニーが止める間もなく、透明マントをかなぐり捨てから猛スピードでスキャバーズ達を追いかけて行ってしまった。
「ロン!」
「戻ってきて、ロン!ロン!」
ロンを呼ぶが、彼は止まることなく走って行ってしまった。
そして3人は顔を見合せてから大急ぎでロンの後を追いかける。
マントを脱ぎ捨て、後ろに旗のようになびかせながら疾走する。