第2章 授業と決闘【賢者の石】
「さて、冗談なのかはたまた冗談ではないのか。どっちだと思う?アリアネ」
腰を抱く腕の力が強くなる。
耳元で囁かれる声に、少しだけぞわりとした感覚がありフレッドの胸元を強く押した。
「フレッド·····離して」
だけど彼は離そうとはしてくれない。
冗談で言っているのかどうか、分からなくて戸惑ってしまう。
本当に好意を抱かれてるのか、それは冗談で家族愛なのかも分からない。
(何時も、『冗談だよ』って笑うから·····)
小さい頃からそう。
小さい頃からこんな冗談か冗談じゃないか、分からないことを言ってくるフレッドに困っていた私はどうしようかと悩んでいる時だった。
「アリアネ、何処にいるの?アリアネ」
小声で私の名前を囁き、探しているハーマイオニーの声が聞こえてきた。
「ふ、フレッド·····私、呼ばれてるから行くわ。離してちょうだい」
「仕方ない、今日は離してあげよう。でも、次は唇にキスしてくれよ?アリアネ」
「冗談は辞めてちょうだい。さっきも言ったけれど、それは好きな人として。貴方、冗談を言ってるのかどうか分かりにくいから、困るわ」
少しだけフレッドを睨むと、私はハーマイオニーの声がする方へと早足で向かう。
その途中、後ろを振り向けばジョージが現れていて、可笑しそうに笑いながらフレッドの肩に腕を乗せているのが見えた。
「·····ふぅん。まだ、冗談だって思われてるのか。前途多難だな、兄弟」
「言うなよ、兄弟。アリアネはまだ、色恋が分からないお年頃なんだよ。だからじっくりと落とすつもりだ」
「頑張れよ、フレッド」
何を話しているのか、小声だから聞こえなかった。
だけど多分良からぬ事を話しているに違いないと思いながら、私はハーマイオニーの所に辿り着く。
「ハーマイオニー」
「アリアネ。探したのよ·····って、あら?貴方、顔が赤いけれど、どうかしたの?」
「·····なんでもないわ。それより、いい本を見つけたの。役に立てれば良いけれど」
顔が赤いのを誤魔化しながら、私はハーマイオニーにフレッドからオススメされた本を手渡す。
するとハーマイオニーは本を手に取ってから、じっくりと授業が始まるまで読み込んでいった。
そして暫くして。
ハーマイオニーはじっくりと読んでから、にっこりと微笑んでいた。