第2章 授業と決闘【賢者の石】
「木曜日に飛行訓練があるの。でも、友達が不安そうで一緒に飛行訓練関連の本を探している最中なの。フレッド、何か良い本はないかしら?」
「僕に聞くのかい?本なんてそんなものを読まないであろう僕に」
「·····そうね、聞いた私が馬鹿だったわ」
フレッドは本なんて読みそうじゃないわね·····とまたため息を吐き出してから本棚で本を探すのに集中する。
するとフレッドは私の顔の両側に手を置いて、私を本棚と自分で挟むような体制にした。
「·····フレッド?」
「本は読まないけれど、オススメなのはある」
そう言いながら、フレッドは右腕を伸ばしてある一冊の本を手に取ると私の手の上に置いた。
本の題名は『クィディッチ今昔』というもの。
「クィディッチ·····」
「コツぐらいは乗ってると思うぜ」
「そうなのね、ありがとう。フレッド」
お礼を言いながら、本を開いてページを捲る。
するとフレッドは腕を私の腰に回してから、自分の身体の方へと抱き寄せてきた。
そして耳元で小さく囁く。
「お礼は、ほっぺにキスでいいぜ。なんなら、唇にしてくれたら嬉しいかも」
「·····はあ?」
「小さい頃はしてくれただろう?お礼に、ほっぺにちゅーって。それの唇版」
「何時の話をしているのよ·····!それに唇って·····ッ」
小声で怒鳴り、フレッドから何とか離れようとする。
だけど彼はがっしりと私の腰を抱き寄せていて、男女の力の差もあって離れない。
確かに小さい頃は頬にキスはしていた。
それは家族としての挨拶であり、でも唇になんてできるわけがない。
しかも人がいる場所でできるわけがないのにと、目を見開かせていた。
「してくれなきゃ、離さないぞ。どうする?」
「·····パーシーに言いつけるわよ。それか、モリーおばさんに」
頬を膨らませながら、フレッドへ振り返って睨む。
「顔が真っ赤だ。ただ、唇にキスしてくれるだけでいいんだぜ?」
「そんな軽く出来るわけないでしょう·····唇になんて。それに、唇のキスは好きな人としなさいよ」
「じゃあ、尚更してもらわないとな」
笑みが深くしたフレッドはゆっくりと顔を近付けてきた。
「冗談言わないでよ·····」
フレッドはたまに、こんな冗談を言う。
ウィーズリー家にいた時も『好きだよ』とか『キスして』と言うけど最終的には『冗談』と笑うのだ。