第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
ジタバタと暴れるスキャバーズをロンは鷲掴みにした。
そして明かりにかざすと、スキャバーズはボロボロになっているのが見える。
「ボロボロじゃない……」
最後に見た時より痩せこけていて、毛がバッサリ抜けてあちこち禿げている。
それにスキャバーズはずっとロンの手の中で必死に逃げようとしていた。
「大丈夫だってば、スキャバーズ!猫はいないよ!ここにはおまえを傷つけるものは何も無いんだから!」
「なんでこんなに逃げようとしてるのかしら?スキャバーズ、クルックシャンクスはいないのよ?」
すると、ハグリッドが急に立ち上がった。
そして窓の外を見ながら顔は血の気が引いたような色になっていく。
「連中がに来おった……」
その言葉に私達は窓の方を振り返った。
遠くの城から、何人かがこちらにやって来るのが見える。
先頭はダンブルドア、そして次に魔法大臣であり、その後ろきは委員会のメンバーがいる。
「おまえさんら、行かねばなんねえ。ここにいるところを連中に見つかっちゃなんねえ……行け、はよう……」
ロンはスキャバーズをポケットに押し込み、ハーマイオニーは透明マントを取り上げる。
「裏口から出してやる」
ハグリッドは裏口から出て、私達は裏庭に出た。
数メートル先にはかぼちゃ畑があり、そこにはバックビークが繋がれている。
何かを感じ取っているのか、頭を左右に振って地面をかいていた。
「大丈夫だ、ビーキー。大丈夫だぞ」
バックビークを落ち着かせたハグリッドはこちらへと振り向いた。
「行け、もう行け」
「ハグリッド、そんなこと出来ないよ」
「そうよ、私達帰れないわ……」
「僕たち、本当は何があったのか、あの連中に話すよ」
「バックビークを殺すなんて、ダメよ」
私達は動こうとはしなかった。
バックビークが殺されるというのに、おずおずと帰ることが出来ない。
だがハグリッドはかぶりを振ってから、それを良しとはしなかった。
「行け!おまえさん達が面倒なことになったは、ますます困る。そんでなくとも最悪なんだ!」
するとハーマイオニーは悲しげに私とハリーとロンにマントを被せた。
その時、小屋の前で人の話声が聞こてくる。
「急ぐんだ。聞くんじゃねえぞ……」
誰が扉を叩いた音が聞こえた。
そして私達は押し黙ってから、ゆっくりとハグリッドの小屋を離れた。