第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
「戸棚にもう一つある」
ハグリッドは私に言われた通りに座りながら、額に浮かんでいる汗を拭っていた。
かなり動揺しているし、不安定なのか見て取れる。
「ハグリッド、誰でもいい、何でもいいから、できることは無いの?ダンブルドアは──」
「ダンブルドアは努力なはった。だけんど、委員会の決定を覆す力はお持ちじゃねえ。ダンブルドアは連中に、バックビークは大丈夫だって言いなさった。だけんど、連中は怖気づいて……ルシウス・マルフォイがどんなやつが知っちょろうが……連中を脅したんだ、そうなんだ……。そんで、処刑人のマクネアはマルフォイの昔っからのダチだし……。だけんど、あっという間にスッパリいく……俺がそばについててやるし……」
やっぱりルシウス・マルフォイは卑怯な男だ。
あんな男が父さんの幼馴染なんて信じられないし、信じたくもない。
「ダンブルドアがおいでなかる。ことが──事が行われる時に。今朝手紙をくださった。俺の──俺のそばに居たいとおっしゃる。偉大なお方だ、ダンブルドアは……」
するとハーマイオニーがすすり泣いた。
「ハグリッド、私達もあなたと一緒にいるわ」
「そうよ。私達も一緒にいるから、いさせて……」
「駄目だ」
ハグリッドはもじゃもじゃした頭を横に振った。
「お前さん達は城に戻るんだ。言っただろうが、おまてさんたちにゃ見せたくねえ。それに、初めっから、ここに来てはなんねえんだ……ファッジやダンブルドアが、おまえさんたちが許可も貰わずに外に出ているのを見つけたら、ハリー、アリアネ、お前さんたち、厄介なことになるぞ」
声もなくハーマイオニーは涙を流していた。
私達は何も出来ない事を突きつけられて、絶望に近い感情を味わう。
そんな時、ハーマイオニーは突然叫んだ。
「ロン!し、信じられないわ、スキャバーズよ!」
「え?」
ハーマイオニーの言葉に私とロンはポカンとした。
「何を言ってるんだい?」
ハーマイオニーは慌てた様子でミルク入れをテーブルに持ってきてひっくり返した。
するとキーキーと騒ぐスキャバーズが出てきたのである。
「スキャバーズ!?貴方、生きてたの!?」
だけどスキャバーズはミルク入れに戻ろうとしていた。
「スキャバーズ!スキャバーズ、こんなところで、いったい何してるんだ?」