第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
「じゃあ私が取ってくるわ。……魔女の背中のコブはどうやって開ければいいの?」
ハーマイオニーの言葉に、私とハリーにロンは目を見開かせてしまう。
「それは──それは、杖で叩いて『ディセンディウム(降下)』って唱えるんだ。でも」
するとハーマイオニーは最後まで言葉を聞かずに、談話室を横切って行ってしまった。
そんな彼女を見て、私達はポカンとしながら顔をお互い見合わせる。
「まさか、取りに行ったんじゃ?」
「まさか……まさかね」
そのまさかの事をハーマイオニーはしたのだ。
15分ぐらい経ったろに、ハーマイオニーは綺麗に畳んだ透明マントを手にして戻ってきたのである。
これは流石に私達も驚愕してしまった。
「ハーマイオニー、最近、どうかしてるんじゃないのか!マルフォイはひっぱたくわ、トレローニー先生のクラスは飛び出すわ──」
「ハーマイオニー、貴方……豪快ね」
「時には必要なことよ」
その後、私達は夕食を食べてからグリフィンドール塔には戻らずに透明マントに隠れてハグリッドの小屋を目指した。
誰にも見つからないようにと玄関ホールを通り過ぎてから、禁じられた森を横切る。
ハグリッドの小屋に着くまで、誰とも遭遇しなかったのか幸いだった。
そして小屋をノックすると、ハグリッドが青ざめた表情で顔を出してそこら中を見回す。
「僕たちだよ」
ハリーが小声で囁いた。
「『透明マント』を着てるんだ。中にいれて。そしたらマントを脱ぐから」
「来ちゃなんねえだろうが!」
ハグリッドはそう言いながらも一歩下がってくれて、私たちは中に入った。
そしてマントを脱いでからハグリッドを見上げる。
泣いていないけれども、意識がないような不安定な状態で、目もぼうとしている。
「茶、飲むか?」
ハグリッドは震えている手でヤカンへと手を伸ばした。
「ハグリッド、バックビークはどこなの?」
「俺、俺、あいつを外に出してやった。俺のかぼちゃ畑さ、つないでやった。木やなんか見た方がいいだろうし、新鮮な空気も吸わせて、そのあとで」
ハグリッドの手の震えか酷くなった。
そして持っていたミルク入れが手から落ちてしまい、粉々に割れてしまう。
「私がやるわ、ハグリッド」
「私もやるから、ハグリッドは座っていて」
私とハーマイオニーは床を綺麗に拭いていく。