第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
「坊や、きっと貴方もうとうとしたのでございましょう!あたくし、そこまでとてつもないことを予言するほど、厚かましくございませんことよ!」
その後、ハリーは追い出されるような形で部屋を出されて私は椅子に腰掛けた。
もちろん水晶玉になにか見える訳じゃないので、適当に見えるふりする。
特に何も問題は起こらなかったが、気になったのはトレローニー先生の予言のこと。
彼女は『闇の帝王』、つまりヴォルデモートのことを言ったのだ。
(気になるけど……先生は言っていないと言い張るし。あれはなんだったのかしら)
気になりながらも、梯子を降りればハリーがいた。
どうやら待っていてくれたらしい。
「さっきの先生の言葉気になるわよね」
「うん。『闇の帝王』について話しけれど、本人は無意識で言ったのかな」
「分からないわ」
そう言いながら私達は談話室へと向かった。
談話室の隅の方には、ロンとハーマイオニーが座り込んでいて何かを見ている。
「ロン、ハーマイオニー。トレローニー先生が今しがた僕たちに言ったんだ」
そこでハリーは言葉を途切れさせた。
2人の顔色が悪かったから。
「バックビークが負けた。ハグリッドがいまこれを送ってよこした」
ハグリッドの手紙をロンが見せてくれた。
涙で文字が滲んではいないけれど、震えた手で書いたのだろう。
字がかなり歪んでいた。
『控訴に敗れた。日没に処刑だ。おまえさんたちにできるこたぁ何んにもねえ。だから、来るなよ。おまえさんたちに見せたくねえ』
見せたくないというのは、バックビークのことなのだろう。
「行かなきゃ」
ハリーが即座に言った。
「ハグリッドが1人で死刑執行人を待つなんて、そんなことさせられないよ」
「でも、日没だ。絶対許可してもらえないだろうし……ハリー、とくに君とアリアネは……」
私とハリーはブラックの件できっと許されることはないのだろう。
その事にハリーは頭を抱えた。
「『透明マント』さえあればなあ……」
「どこにあるの?」
ハーマイオニーが訊ねると、ハリーは隻眼の魔女の像の下にあることを説明した。
「……スネイプがあの辺でまた僕をみかけたりしたら、僕、とっても困ったことになるよ」
「それはそうだわ。アリアネも無理ね、貴方もウロウロしていたら大変な事になるわ」
「そうね……セブに見つかったら厄介だわ」