第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
ロンは顰めっ面を作ると、梯子を登って行った。
「さて、私達は水晶玉に何か見えるのかしら」
「さあね。でも何も見えない気がするよ、見えてもテーブルの色さ」
「その通りね」
20分経った頃。
やっとロンが梯子から降りてきた。
「どうだった?」
「あほくさ。何も見てなかったからでっち上げたよ。先生が納得したとは思わないけどさ……」
「きっと私もでっち上げるしかないようね」
その後、ハリーが呼ばれた。
ハリーは私に手を振ってから梯子を登っていき、私は壁に背を預けながらハリーが降りてくるのを待つ。
10分が過ぎ、20分が過ぎた頃だった。
梯子からハリーが慌てて降りてきてから私を見る。
「ちょっと来てくれて、アリアネ!先生がおかしいんだ」
「先生がおかしい?何時もの事じゃない」
「そうだけど、そうじゃないんだ!いいから来て!」
首を傾げた私は取り敢えずと梯子を登った。
登り終えたそこには、虚ろな目をして口をだらりと開けているトレローニー先生の姿があった。
「闇の帝王は、友もなく孤独に、朋輩に打ち捨てられて横たわっている。その召使いは十二年間鎖につながれていた。今夜、真夜中になる前、その召使いは自由の身となり、ご主人様の元に馳せ参ずるであろう。闇の帝王は、召使いの手を借り、再び立ち上がるであろう。以前よりさらに偉大に、より恐ろしく。今夜だ……真夜中前……召使いが……そのご主人様の……もとに……馳せ参ずるであろう……」
何時ものトレローニー先生の声じゃなかった。
不思議であり不気味な予言とも言える言葉を言った彼女、ガクッと頭を前に傾けて唸った。
すると先生の首ばピンッと起き上がる。
「あーら、ごめんあそばせ。今日のこの暑さでございましょ……あたくし、ちょっとうとうとと……。あら、Ms.フリート。まだあたくし、貴女を呼んでいないと思うのだけれど?」
私とハリーはその場に立ち尽くしていた。
「まあ、2人ともどうかしまして?」
「先生は、先生はたったいまおっしゃいました。闇の帝王が再び立ち上がる……その召使いが帝王のもとに戻る……」
「闇の帝王?『名前を言ってはいけないあの人』のことですの?まぁ、坊や、そんなことを、冗談にも言ってはいけませんわ……再び立ち上がる、なんて……」
「でも、先生がたった今おっしゃいました!先生が、闇の帝王が──」