第13章 裏切り者【アズカバンの囚人】
すると、魔法大臣は私達に気がついて笑みを浮かべた。
「やあ、ハリー、アリアネ。試験を受けてきたのかね?そろそろ試験も全部終わりかな?」
「はい」
「ええ、そうです」
魔法大臣とは数回だが会話をしたことがある。
何かと私を気にかけてくれているけれど、恐らくそれはシリウス・ブラックの件があるからだろう。
「いい天気だ。それなのに……それなのに」
魔法大臣は深くため息を吐き出す。
「ハリー、アリアネ、あまりうるしくないお役目で来たんだがね。『危険生物処理委員会』が私に狂暴かヒッポグリフの処刑に立ち会って欲しいと言うんだ。ブラック事件の状況を調べるのにホグワーツに来る必要もあったので、ついでに立ち会ってくれというわけだ」
「もう控訴裁判は終わったということですか?」
それまで黙っていたロンが、魔法大臣に声をかけた。
「いや、いや。今日の午後の予定だね」
「それだったら、処刑に立ち会う必要なんか全然なくなるかもしれないじゃないですか!ヒッポグリフは自由になるかもしれない!」
ロンの言葉に私も頷いた。
まだ控訴裁判は終わっていない、ハグリッドが負けたわけじゃない。
だから処刑に立ち会う必要はないのかもしれないのだ。
そう思っていれば、魔法大臣の背後にある扉が開いた。
現れたのは2人の魔法使いであり、一人はヨボヨボの年寄りともう1人は真っ黒な細い口髭を生やしたガッチリと大柄の男。
(魔法書の……危険生物処理委員会の人間だわ)
見て直ぐにそう分かった。
「やーれ、やれ、わしゃ、年じゃで、こんなことはもう……ファッジ、2時じゃったかな?」
ヨボヨボの魔法使いは大臣にそう訊ねていて、黒髭の男はベルトに挟んだ何かを指で弄っていた。
よく見るとそれは斧であり、すぐにそれがヒッポグリフを処刑するものだと確信する。
すると、横にいたロンが何かを言おうとしたがハーマイオニーに止められた。
「なんで止めたんだ!」
昼食を食べる為に私達は大広間に入る。
そこでロンがイライラした様子でハーマイオニーに食ってかかった。
「あいつら、見たか?斧まで用意してきてるんだぜ。どこが公正裁判だって言うんだ!」
「ロン、あなたのお父様、魔法省で働いているんでしょ?お父様の上司に向かって、そんな事言えないわよ!」