第12章 守護霊【アズカバンの囚人】
「飴……?」
「気難しそうな顔してから、甘いもの」
ニヤと笑うフレッドは私の頭を掻き混ぜるように撫でてきた。
そして耳元の髪の毛を触られたと思うと、フレッドの手が止まる。
「アリアネ、こんなピアス付けてたっけ?」
「え?あ、これ?クリスマスで誰か分からないけれど贈ってきてくれて。素敵なピアスでしょう?だから気に入って付けてるのよ」
「ふぅん?」
するとフレッドは身を乗り出してきたと思うと、私の耳に顔を寄せた。
なにをするんだろうと思った瞬間、ピリッとした感覚が耳を襲う。
「ひっ……!?」
フレッドに耳たぶを噛まれた。
「な、にするのよ……!」
「うーん。悪戯」
ニヤリと笑ったフレッドを殴ろうとしたら、直ぐに避けられてしまった。
「じゃあ、アリアネ。あまりコンを詰めすぎないように」
それだけ言うとフレッドは立ち去り、そんな彼を見ながら私はため息を吐き出した。
だが少しは息抜きが出来たおかげで、頭の中は少しだけスッキリしている。
「少しだけ感謝しなきゃ」
そう思いながら宿題に取り掛かろうとすれば、視線の先にリーマスの姿が入り込んだ。
何かを探している姿に私は咄嗟に本で顔を隠す。
『忍びの地図』以来、リーマスと話せていない。
怒られてから気まずくて、私が悪いから仕方ないけど彼に幻滅されたんじゃないかと思うと心が傷んだ。
(リーマスに嫌われてたら……どうしよう)
このまま話せなかったらどうしよう。
そう思いながら私はモヤモヤとした気分でいれば、誰かが目の前の椅子に腰掛けた音が聞こえた。
「誰から隠れているのかな?もしかして、私かな」
「あ……」
本を取り上げられたと思えば、そこにはリーマスが意地の悪そうな笑みを浮かべながら座っていた。
「り、リーマス……」
「やあ、アリアネ。で、どうして本で自分を隠していたのかい?」
「それは……」
「当てようか。私に怒られて気まずくて隠れていたんだろう?」
「な、なんで……」
なんで分かったのだろうか。
そう思っていれば、リーマスが更に笑みを深くさせた。
「アリアネは昔から、私に怒られたあとは気まずくて隠れる癖があるからね」
「……ごめんなさい」
「いや、私も言い過ぎたよ。だけどね、アリアネ。自分の身は大切にしなさい」
「うん……」