第12章 守護霊【アズカバンの囚人】
そんな予言あったかしら……と私は首を傾げる。
するとトレローニー先生はラベンダーに向かって微笑みを浮かべた。
「ええ、そうよ。Ms.グレンジャーがクラスを去ることは、あたくし、分かっていましたの。でも『兆』を読み間違えていれば良いのに、と願うこともありますのよ。……『内なる眼』が重荷になる事がありますわ……」
「ハーマイオニーが立ち去ったのは、先生がそう仕向けたんじゃないんですか?予言だなんて馬鹿らしい」
私がそう言うと、ラベンダーとパーバディが睨んできたが気にする事はなかった。
「ハーマイオニーったら、今日は大変な1日だよ。な?」
「ああ……」
「今回のはトレローニー先生が悪いけれどね」
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イースター休暇は休暇らしくなかった。
3年生はかつてないほどに宿題をだされてしまい、ネビルなんてノイローゼ気味。
「休暇が宿題で潰れるわ……」
私は図書室で調べ物をしながら宿題を取り組んでいた。
調べ物は『ヒッポグリフの心理』や、今までのヒッポグリフの裁判の経歴など。
バックビークの控訴で必要な書類を探していたのだ。
「お姫様は調べ物とかで忙しそうだな。なにをしてるんだ?」
調べ物で頭を抱えていれば、声をかけられた。
私の事を『お姫様』と呼ぶのはあの双子ぐらいであり、私は振り返ってからため息を吐き出す。
「人の顔を見てため息なんて酷いじゃないか。頭を抱えてるようだから心配で声をかけたというのに」
「フレッド……」
「疲れきってるようだ、うちのお姫様は」
「貴方のお姫様はジニーじゃないの?」
「君もお姫様」
そう言いながらフレッドは隣の椅子に腰掛けた。
「なになに?『ヒッポグリフの心理』?これ、ロニー坊やも読んでたな」
「知ってるでしょ?ハグリッドのヒッポグリフが裁判で負けたの。だから控訴の為に必要な事を調べているのよ。だから変に邪魔しないでちょうだい」
頭を抱えながら、他の資料を見ようとした時である。
「悩みに悩んでいるお姫様にいいものをあげよう」
フレッドはそう言うと、私の唇に何かを押し当てた。
驚いたせいで口を開いてしまうと、何かが口の中に入り込んだ。
コロンとした丸いもの。
甘くて少し酸っぱい味は、レモンの味であり、口の中にあるものが飴玉という事に気が付いた。