第12章 守護霊【アズカバンの囚人】
私の言葉にハリーはため息を吐き出す。
トレローニー先生は未だに水晶玉をじっと見つめているが、次はどんな死の予言をしてくれるのだろうかと思いながら腕を組む。
「何かが動いている……でも、何かしら?」
どうせ私とハリーが死ぬ予言か、死神犬(グリム)が取り憑いているかだろう。
そう思っていればトレローニー先生は案の定、予想通りの言葉を言ってくれた。
私とハリーの顔をじっと見つめながら。
「ここに、これまでよりはっきりと……ほら、こっそりとあなた達の方に忍び寄り、だんだん大きく……死神犬のグ──」
「いい加減にしてよ!」
トレローニー先生が『グリム』という前に、ハーマイオニーが怒鳴るように叫んだ。
「また、あのバカバカしい死神犬じゃないでしょうね!」
「ハーマイオニー……!」
私は咄嗟にハーマイオニーの名前を叫ぶように呼んだ。
するとトレローニー先生はハーマイオニーを見上げてから立ち上がり、彼女を眺めるように見回す。
「まあ、あなた。こんなことを申し上げるのは、なんですけど、貴方がこのお教室に最初に現れた時から、はっきり分かっていたことでございますわ。あなたには『占い学』という高貴な技術に必要なものが備わっておりませんの。まったく、こんな救いようのない『俗』な心を持った生徒に、いまだかつてお目にかかった事がありませんわ」
トレローニー先生の言葉に、沈黙が流れる。
だがその沈黙を破ったのはハーマイオニーだった。
「結構よ!」
立ち上がったハーマイオニーは、『未来の霧を晴らす』の本をカバンに詰め込んでいく。
「ハーマイオニー!?」
「結構ですとも!やめた!私、出ていくわ!」
「ちょっと、ハーマイオニー!ハーマイオニー!」
私が叫んで呼び止めるけれども、彼女は私の声に返事もせずに教室を出て行ってしまった。
「ハーマイオニー……」
「行っちゃった……」
私はトレローニー先生を睨み付けた。
なんてことを生徒に言ってくれるんだと思い、この場にマクゴナガル先生が入ればいいのにと思った。
すると突然、ラベンダーが声をあげた。
「トレローニー先生。私、いま思い出しまた。ハーマイオニーが立ち去るのを、ご覧になりましたよね?そうでしょう、先生?『イースターのころ、誰か1人が永久に立ち去るでしょう!』先生は、随分前にそうおっしゃいました!」