第12章 守護霊【アズカバンの囚人】
ーアリアネ・イリアス・フリートsideー
水晶玉をじっと見つめるのは凄く馬鹿らしかった。
心を空にしようとしても、『馬鹿らしい』という考えが浮かんでは気が散ってしまう。
それにロンはクスクス笑ったり、ハーマイオニーは舌打ちしたりとそれで気がちってしまうのだ。
「何も見えないわね」
「当たり前よ。水晶玉で何が見えるって言うのよ」
「ハーマイオニー、貴方って占い学に対しての当たりが強いわよ」
15分くらい水晶玉を見つめるけれど、何も見えない。
そして隣に座っているハーマイオニーはイライラと舌打ちをしている。
占い学になると人柄が変わるのは何でだろうか……。
「何か見えた?」
「なんにも」
「僕は見えた。このテーブル、焼け焦げがあるよ。誰か蝋燭を垂らしたんだろうな」
「それぐらい水晶玉じゃなくても見えるわよ」
「まったく時間の無駄よ」
ハーマイオニーはイライラしながら呟いた。
最近だがハーマイオニーはよくイライラしているし、よくヒステリックぽくなっている。
理由を尋ねても教えてくれないから、なんでこんなにイライラしてるか理由が分からない。
「もっと役に立つことを練習できたのに。『元気の出る呪文』の遅れを取り戻すことだって──」
ぶつぶつと呟くハーマイオニーに、私達は困った表情を浮かべる。
するとトレローニー先生が傍を通り過ぎた。
「球の内なる、影のような予兆をどう解釈するか、あたくしに助けて欲しい方、いらっしゃること?」
するとロンがボソリと囁いた。
「僕、助けなんかいらないよ。見りゃわかるさ。今夜は霧が深いでしょう。ってとこだな」
その言葉に私達は思いっきり吹き出した。
「まあ、何事ですの!」
するとトレローニー先生が叫び、生徒たちが一斉に私たちの方へと視線を向ける。
「あなた方は、未来を透視する神秘な震えを乱していますわ!」
「乱しているのは先生のさっきの叫び声のような気がしますけれど……」
「アリアネもなかなかハッキリ言うわよね」
トレローニー先生は私達のテーブルに近寄ると、水晶玉を覗き込んだ。
どうせまた、私とハリーに死相が出ているとか同じような事を言うのだろう。
そう思うとげんなりとしてしまう。
「ここに、何かありますわ!」
「また始まったわね……次も私とハリーは死ぬ運命なのかしら」