第12章 守護霊【アズカバンの囚人】
「『元気の出る呪文』の授業に出なかったなんて、私としたことが!きっと、これ、試験に出るわよ。フリットウィック先生がそんなことをちらっと仰ったもの!」
「そうなの?じゃあ、覚えていなきゃいけないわね」
4人は一緒に梯子を上がってから、薄暗い教室へと足を踏み入れる。
小さなテーブルの一つ一つには水晶玉が置かれていて、ぼうと鈍く光っていた。
「水晶玉は来学期にならないと始まらないと思ってたけどな」
「文句言うなよ。それで手相術が終わったってことなんだから。僕の手相を見る度、先生がぎくっと身を引くのは、もううんざりしてたんだ」
「私もうんざりしてたわ。死相が出てるってそればっかり言われるんだから。終わってくれて助かったわ」
小さな声でボソボソと話していれば、トレローニーが現れた。
「みなさま、こんにちは!」
トレローニーの登場に、アリアネはげんなりとしていたがパーバディとラベンダーは興奮気味。
「あたくし、計画しておりましたより少し早めに水晶玉をお教えする事にしましたの。6月の試験は球に関するものだと、運命があたくしに切らせましたの。それで、あたくし、皆様に十分練習させてさしあげたくて」
その言葉にハーマイオニーは馬鹿にしたかのように、鼻をフンと鳴らした。
「あーら、まぁ……『運命が知らせましたの』……どなたさまが試験をお出しになるの?あの人自身じゃない!なんて驚くべき予言でしょ!」
「ハーマイオニー……、しー!」
配慮もせずに言うハーマイオニーに、アリアネは唇に指を当てて静かにするように言った。
トレローニーはというと、聞こえていなかった様な素振りを見せながら言葉を続ける。
「水晶占いは。とても高度か技術ですのよ。球の無限の深奥を初めて覗き込んだ時、みなさまが初めから何かを『見る』事は期待しておりませんわ。まず意識と、外なる眼をリラックスさせることから練習を始めましょう」
意味がわからないと言わんばかりにアリアネはため息を吐き出した。
ロンはというと、トレローニーの説明にクスクスと笑い始めている。
「そうすれば『内なる眼』と超意識とが顕れましょう。幸運に恵まれれば、みなさまの中の何人かは、この授業が終わるまでには『見える』かもしれませんわ」