第12章 守護霊【アズカバンの囚人】
「ついてるよ、アリアネ」
セドリックの手が伸びて、アリアネの口元についているパン屑を取った。
まさか着いていたなんて知らなかった彼女は、顔を赤く染めてからセドリックが触れた口元を触れる。
「あ、ありがとう……」
顔を赤く染めながら、目を逸らしてお礼を言う。
すると顔に影が出来て視線をそちらへと向ければ、真剣な表情を浮かべたセドリックの端正な顔が近付いていた。
「顔赤くなってる。可愛い」
「や、辞めてよ……恥ずかしいから」
「はは!やっぱり君を諦めることは出来ないね。だから、少しづつでいいから、僕を意識してくれ。それが今、僕が君に求めることだよ」
アリアネはサンドイッチを握りながら、少しだけ目線を逸らした。
意識してほしいと言われたけれども、やはりセドリックは友人としてとしか見えていなかったから……。
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「デートはどうだった?アリアネ」
「だから、デートって言わないでよ、ロン!」
ピクニックが終わり、アリアネはグリフィンドール塔の談話室に戻ってきていた。
ロンはニヤニヤと彼女を出迎えてから、興味津々と話を聞こうとしていた。
だが、近くの椅子に腰掛けていたフレッドは不機嫌そうにしていた。
「フレッド、なんで不機嫌なの……?」
アリアネはロンの耳元でそう囁いた。
「そりゃ、君がセドリック・ディゴリーとデートなんてするからだよ」
「え、そうなの?」
「君って、変なところ鈍感だよね。恋愛に関して鈍感なのかな?」
「貶してる?」
アリアネはロンを睨みながらも、ハーマイオニーの元に向かった。
ハーマイオニーはバックビークの控訴の件について調べていて、アリアネも近くにある本を抱えて読み始める。
「デート、どうだった?」
「ハーマイオニーまで……。普通にピクニックしただけよ。楽しかったけど」
「そう!そのまま付き合ったりするのかしら?」
「しないわよ。セドリックは私にとって友人なんだから……」
そう、友人なのだ。
セドリックのことを異性としては見ているけれど、友人として見ている。
交際や恋人にはどうしても考えられなかった。
「それに、恋はちょっとうんざりしてるから」
初恋が呆気なく消えたことを、少し引き摺っているのだからうんざりだった。