第12章 守護霊【アズカバンの囚人】
「じゃあ、中庭にでも行こうか。人気がない場所を知っているんだ。あそこならゆっくり出来ると思うよ」
人気のない場所。
その言葉にアリアネは少しだけ身構えたけれども、セドリックに限って無理矢理なにかをしようとする人間には思えずに警戒心を解く。
「人気のない場所なのね」
「君は自覚してるか分からないけれど、人を惹きつける魅力を持っているんだよ。だから独り占めしたくて」
ニッコリと微笑まれてアリアネは少し照れてしまう。
諦めていないとは言われたけれど、ここまではっきりと口にされては困ってしまう。
アリアネはセドリックの隣を歩きながら、中庭までを目指した。
道中、色んな人とすれ違ったがセドリックがいるせいなのか視線を向けられることが多い。
「人気のない場所に行くのは、こうして視線を向けられないようにする為でもあるんだ」
唐突にセドリックが言った。
「そうだったのね。セドリックってイケメンだから人目を引きつけるものね」
「その言葉、そのまま君に返すよ」
セドリックはウィンクをしながら笑い、アリアネを中庭へと誘った。
中庭は人がチラホラいて、セドリックは中庭の少し離れた場所にある木の根元へと向かう。
「ここでピクニックしようか。ハウスエルフには既にサンドイッチを作ってもらっているんだ」
「涼しくていい場所ね」
「だろう?たまにここで昼寝をしたりもするんだ。人が少なくて静かだから昼寝にはちょうどいい」
「昼寝、確かにいい所ね」
セドリックは木の根っこに腰掛けて、隣をポンポンと叩いてアリアネに来るよう促した。
アリアネは少し緊張をしながらも、彼の隣に腰掛けてから湖を眺める。
静かな場所である。
人の声は微かに聞こえて来る程度であり、確かに昼寝するにはちょうどいい。
「サンドイッチ、どうぞ」
「ありがとう。わあ……美味しそう」
レタスとトマトにスクランブルエッグを挟んであるサンドイッチは美味しそうである。
瑞々しいトマトやレタスに食欲がそそられていれば、セドリックが隣でサンドイッチを頬張っていた。
「いただきます」
サンドイッチを頬張ると甘酸っぱいトマトと甘めのスクランブルエッグが口の中いっぱいに広がる。
美味しいと心の中で呟いていた時であった。