第12章 守護霊【アズカバンの囚人】
「それで、校長は、君の父親がどういう状況で吾輩の命を救ったのかも教えてくれたのかね?それとも、校長は、詳細なる話が、大切なポッターの繊細なお耳にあまりに不快だと思し召したかな?」
ハリーは唇を噛み締め、アリアネはスネイプの瞳が怒りに染まっているのに気が付いた。
何をそんなに怒っているのだろうかと思いながら、息をただ飲んだ。
「君が間違った父親像を抱いたままこの場を立ち去ろうと思うと、ポッター、虫唾が走る。吾輩が許さん」
スネイプは顔を歪めながら微笑んだ。
「輝かしい英雄的行為でも想像していたのかね?ならばご訂正申し上げよう。君の聖人君子の父上は、友人と一緒に吾輩に大いに楽しい悪戯を仕掛けてくださった。それが吾輩を死に至らしめるようなものだったが、君の父親は土壇場で弱気になった。君の父親の行為がどこが勇敢なものか。吾輩の命を救うと同時に、自分の命運も救ったわけだ。あの悪戯が成功していたら、あいつはホグワーツを追放されていたはずだ」
その言葉にアリアネとハリーは呆気に取られていた。
「ポッター、フリート!ポケットをひっくり返したまえ!ポケットをひっくり返したまえ。それとも真っ直ぐ校長のところへ行きたいのか!ポッター、フリート、ポケットを裏返すんだ!」
慌てて2人はポケットを裏返した。
ハリーはゾンコの店の悪戯グッズの買い物袋と『忍びの地図』、アリアネは1つのゾンコの悪戯グッズを取り出す。
「ロンに貰いました」
「ロンが、この前のホグズミードで買ってきてくれたんです」
「そう?それ以来ずっと持ち歩いていたというわけだ。なんとも泣かせてくれますな……」
「今日遊ぼうとしたんですよ。私達はホグズミードに行けないから暇で暇で」
「ほう?ところでこっちは?」
スネイプは『忍びの地図』を取り上げた。
地図は何も記載されていないので、スネイプからしてはただの羊皮紙にしか見えないのだろう。
「余った羊皮紙の切れっ端です」
「こんな古ぼけた切れっ端、当然君には必要ないだろう?吾輩が捨てても構わんな?」
「やめて!」
アリアネは頭を抱えたくなった。
恐らく今のでただの羊皮紙ではないとスネイプに気づかれたはずなのだから。
その証拠にスネイプは意地の悪い笑みを浮かべている。