第12章 守護霊【アズカバンの囚人】
暫くすれば、マルフォイとクラッブにゴイルが現れた。
その姿を見た瞬間、アリアネの気分は急落下していきマントの下からマルフォイ達を睨みつける。
「……父上のふくろう便がもう届いてもいいころだ。僕の腕のことで聴聞会に出席なさらなければならなかったんだ……3ヶ月も腕が使えなかった事情を話すのに」
クラッブとゴイルは品のない笑いを上げ、マルフォイは何処か見下したように話を続けた。
「あの毛むくじゃらのウスノロデカが、なんとか自己弁護しようとするのを聞いたよ……『こいつは何も悪さはしねえです。ほんとですだ──』とか……あのヒッポグリフはもう死んだも当然だよ」
最悪な会話をしていたマルフォイは、突然ロンが居ることに気がついて意地の悪い笑みを浮かべた。
「ウィーズリー、何してるんだい?」
意地の悪い笑みで顔を歪ませているマルフォイは、ちらるもロンの背後にある叫びの屋敷を見て更に笑みを深くさせる。
「さしずめ、ここに住みたいんだろうねぇ。ウィーズリー、違うかい?自分の部屋がほしいなんて夢見てるんだろう?君の家じゃ、全員が1部屋で寝るって聞いたけど、ほんとうかい?」
口を開けば人を貶し見下すマルフォイにアリアネとハリーは苛立ちを覚えた。
そして飛びかかろうとしたロンのローブを2人で引っ捕まえて止める。
「僕に任せてくれ。行こう、アリアネ」
ハリーはアリアネの耳元で何をするかを囁く。
そして話を聞いたアリアネは楽しげに笑みを浮かべて頷いた。
2人はマルフォイ達の背後に周り、しゃがみこむと地べたの泥を片手ですくう。
そしてお互い顔を見合せてからニヤリとした。
「僕たち、ちょうど君の友人のハグリッドのことを話してたところだよ。『危険生物処理委員会』で、いまあいつが何を言ってるところだろうってね。委員たちがヒッポグリフの首をちょん切ったら、あいつは泣くかなあ」
そうマルフォイが楽しげに呟いた瞬間、ハリーとアリアネはベチャッと泥を彼に投げつけた。
マルフォイの頭には見事に泥がついて、髪の毛から黒い泥が滴り落ちる。
「な、なんだ?」
マルフォイ達は必死に泥を投げた犯人を見つけようとした。
だが透明マントで隠れているアリアネとハリーを見つけることは出来るわけがない。