第12章 守護霊【アズカバンの囚人】
力を込めて、腰を抱く腕を叩けばすんなりと腕は離れる。
「それは残念だな……」
「折角誘ってくれたのにごめんなさい。でもお誘いは嬉しかったわ」
「本当かい?それじゃあ、ホグズミードは行かなくて中庭でデートしないかい?」
セドリックはまるでフレッドがいないかのように扱っていた。
その扱いにフレッドは眉を寄せながら、ちらりとアリアネへと視線を向ける。
「中庭で?」
「うん。ハウスエルフに頼めばサンドイッチ作ってくれるはずだから。どうだい?」
明日はハリー達とホグズミードにこっそり行こうかと話していた。
だけどセドリックの誘いも断るわけにいかないと思いながらアリアネは悩みに悩んでしまう。
セドリックの告白を断ってからアリアネは、なんだか申し訳ない気分になっていた。
だから誘いも断りにくいと思っていた時である。
「セドリック・ディゴリー、アリアネは俺との約束が先にあるんだ。悪いけど今回は諦めてくれ。な、アリアネ」
「え?」
「話合わせて。ホグズミードに行きたいんだろう?」
フレッドは耳元でそう小さく囁いた。
「そ、そうなの。実はフレッドとの約束があって」
「そうなのかい……」
セドリックはその言葉に少し残念そうに眉を下げた。
その姿に罪悪感を覚えたアリアネは慌ててしまう。
「でも、日曜日!日曜日なら予定が空いてるからその時に中庭でピクニックしましょう」
「本当かい?じゃあ、日曜日に迎えに来るよ」
セドリックは表情を明るくさせると、にっこりと微笑みながら『じゃあ、日曜日に』と手を振ってからグリフィンドール塔から離れていった。
そんな彼に手を振りながらアリアネは息を吐き出す。
「思ったんだけど、アリアネはセドリック・ディゴリーに甘いんじゃないかい?俺にはそんなに甘くないのに」
「罪悪感を感じたのよ、ちょっと……」
「へえ?じゃあ罪悪感を感じれば俺ともデートしてくれるのかい?」
フレッドの手が伸びて、アリアネの顎に触れる。
細く骨ばった指は彼女の顎をゆっくりと撫でてから上を向かせ、フレッドの顔がゆっくりと近づく。
「罪悪感を感じるなら、キスも許すってわけだ」
「……な!?」
「だってそうだろう?罪悪感を感じたから、セドリック・ディゴリーとデートするんだから、キスも許しそうだ」