第12章 守護霊【アズカバンの囚人】
「カドガン卿、いましがた、グリフィンドール塔に男を一人通しましたか?」
「通しましたぞ、ご婦人!」
カドガン卿の叫び声に、全員が愕然とした。
つまり、カドガン卿はシリウス・ブラックを通したのだ、ロンの言う通りなのである。
「と、通した?あ、合言葉は!」
「持っておりましたぞ!ご婦人、1週間分全部持っておりました。小さな紙切れを読み上げておりました!」
その言葉にアリアネとハリーは顔を見合せた。
そしてゆっくりととある少年の方へと視線を向けると、マクゴナガルが血の気の引いた顔で入ってくる。
「誰ですか。今週の合言葉を書き出して、その辺に放っておいた底抜けの愚か者は、誰です?」
シーンと静まり返っていた談話室で、『ヒッ』という小さな悲鳴が響いた。
その悲鳴はネビルのものであり、アリアネは『やっぱり……』と小さく囁いてから額に手を当てた。
その夜はグリフィンドール寮生は全員眠ることが出来なかった。
再びシリウス・ブラックが戻ってくるのではないかという恐怖があり、彼が捕まる知らせをただ待っていた。
そして明け方、マクゴナガルが戻ってきてシリウス・ブラックが逃げおおせたと伝えた。
「あちこちにシリウス・ブラックの写真ばかり貼られて、気持ちが悪いよ!」
「仕方ないでしょう……シリウス・ブラックが入ってきてたんだから」
次の日から警戒が厳しくなっていた。
フリットウィックは、入口の扉という扉にシリウス・ブラックの手配書の写真を貼りまくっている。
カドガン卿はクビとなり、『太った婦人』が戻ってきた。
絵は見事に修復されていあが、警備に無愛想なトロールが数人雇われた。
「あの穴、警備されていないけど大丈夫かな」
「それは私も思ったわ」
4階の隻眼の魔女の像の穴。
そこが警備されていなくて、塞がれていないことにハリーとアリアネは心配だった。
「誰かに教えるべきなのかなぁ?」
「ハニーデュークス店から入ってきたんじゃないって、分かってるじゃないか。店に侵入してたんだったら、噂が僕たちの耳にはいってるはすだろ」
「そうれも、そうよね……」
ロンはというと、シリウス・ブラックが侵入した話を色んな所で話していた。
そして殆どの生徒がその話を聞くのを楽しみにしていたものだから、アリアネは馬鹿らしくて鼻で笑った。