第12章 守護霊【アズカバンの囚人】
アリアネはハーマイオニーの手を取り、『早く』と促してみるが彼女は首を横に振って行こうとしない。
「無理よ、ハリー、アリアネ。あと422ページも残ってるの!どっちにしろ……」
ちらりと彼女はロンを恐る恐ると見る。
「あの人が私に来て欲しくないでしょ」
その言葉にアリアネは『そんなことない』と言おうとしたが、まるで見計らったようにロンがこれみようがしに呟いた。
「スキャバーズが食われちゃってなければなぁ。ハエ型ヌガーがもらえたのに。あいつ、これが好物だった」
ハーマイオニーはその瞬間、わっと泣き出した。
ハリーはオロオロとし始めて、アリアネはハーマイオニーの背中を擦りながらロンを睨みつける。
するとハーマイオニーは分厚い本を抱えて、すすり泣きながら女子寮の方へと走って行ってしまった。
「この馬鹿ロン!」
「あだっ!?」
バシッと痛い音を鳴らしながら、アリアネはロンの頭を力いっぱい引っ叩いてからハーマイオニーが消えた女子寮へと走っていった。
その後、アリアネはハーマイオニーを泣き止ませて慰めてなんとか落ち着かせてから寝かせた。
ハーマイオニーはヒステリックになっていたり、辛そうにしていたりと情緒不安定である。
「なんでこんなにも情緒不安定になってるのかしら……」
眠ったハーマイオニーの髪の毛を撫でながらアリアネは頭を悩ませた。
「とりあえず、私も寝よう……」
そう呟いた時であった。
「あああああああァァァァァァッッッ!やめてぇぇぇぇぇぇ!!」
男子寮の方からロンのとてつもない叫び声が聞こえてきたなである。
その声に眠っていたハーマイオニーや他の女子生徒も飛び起きて、何事かとザワつく。
アリアネはロンの声だと気がつくとすぐにベッドから飛び降りて、男子寮へと走った。
「何事なの!?」
「アリアネ!?ここ男子寮だぞ!」
「そんな事言ってられる場合じゃない叫び声が聞こえたから入ってきたのよ!ロン!どうしたのよ!」
ロンは恐怖に染まりきった顔で切り裂かれているカーテンを指さした。
「ブラックだ!シリウス・ブラックだ!ナイフを持ってた!」
「は?シリウス・ブラック?」
「エーッ?」
「ここに!たったいま!カーテンを切ったんだ!それで目が覚めたんだ!」