第12章 守護霊【アズカバンの囚人】
ハリー達が地を蹴る。
するとファイアボルトに跨っているハリーは誰より速く高く上昇していた。
解説者はウィーズリーの双子と仲のいい、リー・ジョーダン。
「全員が飛び立ちました。今回の試合の目玉は、何といってもグリフィンドールのハリー・ポッター乗るところのファイアボルトでしょう。『賢い箒の飛び方』によれば、ファイアボルトは今年の世界選手権大会ナショナル・チームの公式箒になるとのことです」
「ジョーダン、試合のほうがどうなっているか解説してくれませんか?」
試合の実況ではなく、ファイアボルトの宣伝を始めたジョーダンにマクゴナガルが割って入った。
「了解です。先生、ちょっと背景説明をしただけで。ところでファイアボルトは、自動ブレーキが組み込まれており、さらに」
「ジョーダン!」
「オッケー、オッケー。ボールはグリフィンドール側です。グリフィンドールのケイティ・ベルがゴールを目指しています……」
試合状況を見ていたアリアネは、ふと隣を見れば真っ黒な犬が座っているのが見えた。
「え……?」
黒犬はアリアネを見ると『わふっ』と小さく吠えてから何処かへと行ってしまう。
その姿に何処かざわつきを覚えたアリアネは椅子から立ち上がると、犬を追いかけるように歩き出した。
ロンはそんな彼女に気が付かず、クィディッチの試合に夢中になっていた。
黒犬はクィディッチの競技場を出ていこうとした時である。
肩をガッシリと誰かに掴まれて、体の動きを止められた。
「何処に行くのかね」
「セブ……?」
肩を掴んでいたのはスネイプ。
彼は眉を寄せてアリアネを見下ろしていた。
「今、黒犬がいたのよ……」
「黒犬?」
「そう。だから追いかけようとしたんだけど……あれ」
黒犬はいつの間にか姿を消していた。
アリアネはその事に眉を寄せながら首を傾げる。
「黒犬がこのホグワーツにいたというのかね」
「うん。私、何度も見たのよ……なんだか気になるのよ、あの黒犬」
「だからといって、フラフラと追いかけようとするものではない。それがシリウス・ブラックの手先の黒犬だったらどうする」
「黒犬が?」
「有り得ないことではなかろう。早くクィディッチ競技場に戻りたまえ。君はシリウス・ブラックに狙われているのだから、目につく場所にいたまえ」