第12章 守護霊【アズカバンの囚人】
ハーマイオニーが、『数占い』の素晴らしさを語らろうとした時だった。
押し殺したような叫び声が男子寮から聞こえて、ざわりと談話室がどよめく。
どうしたのだろうか。
アリアネは瞬きをしながら男子寮に繋がる螺旋階段をみれば、慌ただしい足音が聞こえてロンがベッドのシーツを引きずって飛び込んできた。
「見ろ!」
ロンはハーマイオニーの元に近づくと大声で怒鳴り込んだ。
そしてハーマイオニーの目の前でシーツを振り回す。
「見ろよ!」
「ロン、どうしたの?」
「どうしたのよ、そんなに叫んで……」
「スキャバーズが!見ろ!スキャバーズが!」
どうしたのだろうかとアリアネはまじまじとロンが掴んでいるシーツを見た。
そこには何か赤いものがついているが、それがまるで血のようだ。
「血だ!スキャバーズがいなくなった!それで、床に何があったかわかるか?」
「い、いいえ」
ロンの勢いにハーマイオニーは声を震わせた。
するとロンは勢いよくハーマイオニーの翻訳文の上に何かを投げる。
それは数本の長いオレンジ色の猫の毛だった。
ロンとハーマイオニーの友情がついに消え去りそうになっていた。
お互いに怒り狂っていて、仲直りの見込みもない状態である。
ロンはクルックシャンクスがスキャバーズを食べてしまいそうになっているのに、1度も真剣にクルックシャンクスを見張ることもしなかったと激怒。
ハーマイオニーはクルックシャンクスよ無実を装い、男子寮の床をちゃんとみたのかと言い、それが余計にロンの怒りに油を注いだのである。
ハーマイオニーはというと、クルックシャンクスがスキャバーズを食べた証拠がない。
オレンジ色の毛はクリスマスの時からあったかもしれないのにと怒っていた。
「ハーマイオニー」
「なによ!アリアネもロンの味方するのでしょう!どうせ幼馴染が大切だものね!」
「まだ私、何も言ってないわよ……」
「ハーマイオニー、その言い方はないだろう?」
「いいわよ。ハリーもロンに味方しなさい。どうせそうすると思ったわ!」
ハーマイオニーはヒステリック気味に叫んだ。
「最初はファイアボルトとピアス、今度はスキャバーズ。皆私が悪いってわけね!ほっといて、ハリー、アリアネ。私、とっても忙しいんだから!」