第12章 守護霊【アズカバンの囚人】
「さあ、ご褒美に飲むといい。『三本の箒』のだよ。今まで飲んだことがないはずだ」
リーマスはにっこりと微笑み、鞄の中から3本の瓶を取り出した。
その瓶を見た瞬間アリアネとハリーは表情を明るくさせる。
「「バタービールだ!」」
その瞬間リーマスは眉を寄せた。
当たり前である、2人は本当ならホグズミードに行けてないからバタービールを知らないはずなのだから。
その事に気が付いた2人は慌てた表情を浮かべる。
「あの、ロンとハーマイオニーが、ホグズミードから少し持ってきてくれたので」
「それで好きになったのよ。ねえ、ハリー」
「うんっ!」
「そうか」
リーマスは腑に落ちない表情を浮かべながら、2人を見るが気を取り直してから瓶を掲げる。
「それじゃ、レイブンクロー戦でのグリフィンドールの勝利を祈って!おっと先生がどっちかに味方してはいけないな……」
「別に良いんじゃない?マクゴナガル先生もたまにグリフィンドール応援してるみたいだから」
「マクゴナガル先生はね、クィディッチが好きだからね……」
3人はそこから黙ってバタービールを飲んでいた。
暫くしてからハリーが口を開く。
「吸魂鬼の頭巾の下には何があるんですか?」
「うーん……本当のことを知っている者は、もう口が利けない状態になっている。つまり、吸魂鬼が頭巾をとるとときは、最後の最悪の武器を使う時なんだ」
「最後の最悪の武器?」
「どんな武器ですか?」
「『吸魂鬼の接吻』と呼ばれている」
何とも皮肉そうな名前だとアリアネは思いながら、バタービールを飲んでいく。
「吸魂鬼は、徹底的に破滅させたい者に対してこれを実行する。たぶんあの下には口のようなものがあるんだろう。やつらは獲物の口を自分の上下の顎で挟み、そして餌食の魂を吸い取る」
ハリーとアリアネは思わずバタービールを吐き出した。
「えっ、殺す?」
「殺してしまうの?相手を?」
「いや、そうじゃない。もっとひどい。魂がなくても生きられる。脳や心臓がまだ動いていればね。しかし、もはや自分が誰なのかわからない。記憶もない、まったく……何もない。回復の見込みもない。ただ存在するだけだ。空っぽの抜け殻となって。魂は永遠に戻らず……失われる」
リーマスは『怖いものだよ』と呟きながらバタービールを1口飲んだ。