第12章 守護霊【アズカバンの囚人】
「わ、私は、実は知っている。ホグワーツで友達だったんだ。ジェームズとウィリアスとは·····。さあ、ハリー、今夜はこのぐらいでやめよう。この呪文はとてつもなく高度だ·····言うんじゃなかった。君にこんなことをさせるなんて·····」
「違います!僕、もう一度やってみます!僕の考えたことは、十分幸せじゃなかったんです。きっとそうです·····ちょっと待って·····」
「ハリー、大丈夫なの?」
「大丈夫さ。もう一度、僕が幸せだったことを考えてみるよ」
アリアネは不安であり心配だった。
何度も死んだ両親の声やヴォルデモートの声を聞いて、疲労しているはずなのに無理をしているとはずなのだからと。
(でも、吸魂鬼と対峙するなら·····防衛術を身に付けるためには必要なこと·····)
そう思っていれば、ハリーはゆっくりと立ち上がった。
手にしている杖を強く握りしめながら、その表情は決意に満ちている。
「いいんだね?」
リーマスの言葉にハリーは深く頷いて見せた。
「気持ちを集中させたね?行くよ、それ!」
リーマスが再び箱を開ければ、吸魂鬼がゆらりと動いて現れる。
その途端部屋の気温が一気に下がり、冷たく凍るのではないかと思ってしまうほどの気温になった。
「エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)!エクスペクト・パトローナム!」
ハリーが何度か呪文を唱えた時だった。
彼の杖の先から大きな銀色の影が飛び出してきて、吸魂鬼の間に漂い始める。
そして数分後、リーマスが吸魂鬼へと杖を向けた。
「リディクラス!」
吸魂鬼が消え、ハリーの守護霊も消えた。
その途端、ハリーは力無く椅子に崩れ落ちてアリアネは慌てて駆け寄った。
「ハリー!大丈夫?」
「う、うん·····なんとか·····」
「よくやった!」
リーマスはボガードを箱に押し込んだあと、嬉しげにしながらへたり込んでいるハリーの元に来た。
「よくできたよ、ハリー!立派なスタートだ!」
「もう1回やってもいいですか?もう一度だけ」
「いや、いまはだめだ。一晩にしては十分すぎるほどだ。さあ──」
リーマスはハニーデュークスの大きな高級である板チョコをハリーに渡した。
「全部食べなさい。そうしないと、私がマダム・ポンフリーにこっぴどくお仕置されてしまう。来週、また同じ時間でいいかな?」