第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
アリアネは不機嫌なまま、クリスマスディナーを過ごしてからグリフィンドール塔へと戻った。
そして談話室で匿名から送られてきたピアスを眺めていれば、ハリーが箒磨きセットを持って降りてきた。
「あら、ハリー。箒を磨くの?」
「うん。どこか磨く所はないかなと思ったけど、新品なのか綺麗なんだよね、磨かなくても。アリアネは·····そのピアス外したのかい?」
「ハーマイオニーが外した方が良いって。ハーマイオニー、もしかしたらシリウス・ブラックが送ってきたかもしれないって怪しんでるのよ」
「シリウス・ブラックが?なんでわざわざ僕たちに?」
ハリーの言葉にアリアネは肩を竦めて見せる。
「シリウス・ブラックといえば·····私、夢をよく見るのよ。シリウス・ブラックが出てくる夢を」
「夢?」
「夢でシリウス・ブラックが出てきて、赤ん坊の私を抱っこしているのよ。周りに私の両親とリーマスもいて·····それがとても優しい夢なのよ」
アリアネは箱をギュッと握り締めながらうわ言のように呟いた。
そんな彼女の話を聞いて、ハリーは少し悩んだ表情を浮かべてから口を開く。
「記憶じゃないかな、アリアネが赤ん坊の頃の。シリウス・ブラックが味方の振りをしていた時の記憶·····」
「そう、かな」
「でも、複雑だね」
「そうね、優しい夢だもの·····」
優しすぎる夢。
幸せな夢と言ってもいい夢をアリアネは見て、必ずその夢にはシリウス・ブラックが出てくる。
両親の敵とも呼べる存在なのに。
何故、彼が出てくる夢はこんなにも優しいのだろうかとアリアネはずっと悩んでいた。
(複雑な気分·····。でも、憎しみが湧いてこないのはなんでなんだろう)
不思議に思っていれば、肖像画が開いた。
そこからはハーマイオニーと、そして何故かマクゴナガルが入ってきたのである。
「マクゴナガル先生·····?」
するとロンも入ってきて、マクゴナガルが居ることに驚いた表情を浮かべていた。
そしてハーマイオニーは3人を避けるように歩いていくと、本を拾い上げて顔を隠す。
「これらが、そうなのですね?」
マクゴナガルの目はハリーの持っているファイアボルトと、アリアネの持つピアスの箱に向いていた。