第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
突然、小屋の隅の方で何かを噛みちぎるような音が聞こえて4人は弾かれたようにそちらへと振り返る。
そこにはバックビークがいて、何か小動物ぐらいの骨をバリバリと齧っていた。
「小屋の中にバックビークを置いてるの·····!?」
「こいつを雪ん中につないで放っておけねえ。たった1人で!クリスマスだっちゅうのに!」
ハリー、アリアネ、ロン、ハーマイオニーは顔を見合せながらため息を吐き出した。
ハグリッドの言う『面白い生き物』は世間では『恐ろしい生き物』である。
だが、バックビークが恐ろしいとは思わない、他の生き物たちに比べたら可愛らしいものだ。
「ハグリッド、しっかりした強い弁護を打ち出さないといけないわ」
「そうよ。ハグリッド、貴方がバックビークが安全だと証明しなきゃ。きっと貴方ならできるわ」
ハーマイオニーとアリアネの言葉にハグリッドは首を横に振る。
「それでも、同じこった。やつら、処理屋の悪魔め、連中はルシウス・マルフォイの手の内だ!やつを怖がっとる!もし俺が裁判で負けたら、バックビークは──」
ハグリッドはまた更に大きな声で泣き出してしまう。
「ダンブルドアはどうなの、ハグリッド?」
「あの方は、俺のためにもう十分すぎるのどやりなすった。手一杯でおいでなさる。吸魂鬼のやつらが城の中さ入らんようにしとくとか、シリウス・ブラックがうろうろとか──」
ロンとハーマイオニーは急いでハリーとアリアネを見た。
その表情は、2人がハグリッドを責めるのではないかという表情だ。
だが2人はこんなハグリッドを責めるつもりはないし、出来るわけがないと思っていた。
「ねえ、ハグリッド。諦めちゃだめだ。ハーマイオニーの言う通りだよ。ちゃんとした弁護が必要なだけだ。僕たちを証人に呼んでいいよ」
「私、ヒッポグリフいじめ事件について読んだことがあるわ。たしか、ヒッポグリフは釈放されたっけ。探してあげる、ハグリッド。正確に何が起こったのか、調べるわ」
「私たちがヒッポグリフは無実だって証明してあげるから、ハグリッドも証明しなきゃ」
3人の言葉にハグリッドはますます声を上げて泣き出してしまった。
そんなハグリッドに困った3人は、ロンに『なんとかしてよ』と視線を送る。
「アー·····お茶でも入れようか?」