第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
誰に掴まれたのだろうか。
そう思いながら振り返れば、そこには相変わらずの真っ黒の姿をしたスネイプがいた。
「セブ·····」
「先程から呼んでいたが、聞こえていなかったようだな。酷い顔色だがどうしたのだね?」
「·····なんでもないわ」
ふい·····と彼女は目を逸らした。
だが『なんでもない』と言い、納得出来るような顔色ではない。
スネイプは眉間に皺を寄せながらため息を吐き出す。
「なんでもないという顔色ではないがね。なにがあった」
「·····ねえ、セブ。私、前に両親のことは全部教えてって言ったよね」
「·····ああ」
「なんで·····」
なんで、シリウス・ブラックが裏切ったせいで死んだという話をしてくれなかったのか。
そう言おうとしたがアリアネは唇を噛み締めてから、顔を俯かせる。
話してしまえば、何処で聞いたかは根掘り葉掘り聞かれるのはわかっている。
それで勝手にホグズミードに行ったのがバレたら困ると思ったアリアネは話さなかった。
スネイプに知られたら1番面倒なのは知っているから。
「なんでもないわ·····やっぱり。私、行くわ」
「待て、アリアネ!」
制止も聞かずに彼女は歩き出してしまった。
そして、外に出ようかと思った時である。
「アリアネ!」
「ハリー?」
大広間の近くでアリアネはハリー達と遭遇した。
「どうしたの?」
「ハグリッドのところに行こう、アリアネ。それで、ブラックのことをなんで僕たちに黙っていたのか聞くんだ!ハグリッドなら面倒な事にならずに教えてくれるかもしれない」
「·····そうね、そうだわ。行きましょう。実はさっきセブに会ったから聞こうとしたの。でも辞めておいたわ」
「その方がいいよ。面倒なことになっちまう」
禁じられた森を通り過ぎた4人はハグリッドの小屋へと辿り着いた。
まるで粉砂糖がかかったような小屋のドアをノックしてみるが、返答がない。
「出かけてるのかしら?」
ロンは首を傾げながら戸に耳をくっつける。
「変な音がする。聞いて、ファングかなぁ?」
その言葉に3人も戸に耳をくっ付けてみる。
すると、小屋の中からは低い、呻くような音が聞こえてきた。
「誰か呼んだ方がいいかな?」
「ハグリッド!」
ハリーとアリアネが戸をドンドンと叩いてみる。