第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
寝室は暗くして静かだ。
逆にその静けさが落ち着かなくてアリアネはサイドテーブルへと手を伸ばした。
手にしたのはハグリッドがくれた革表紙のアルバム。
(この人なんだ·····シリウス・ブラック)
結婚式の写真。
自分の両親が写ってる中で、父親のウィリアスの傍にハンサムな溢れるような笑顔を浮かべた黒髪の男性。
それがシリウス・ブラックだと、ファッジの言葉でようやく気づいた。
「シリウス・ブラック·····」
夢の中で見たのは彼だったのかもしれない、いやそうのだろうとアリアネは確信した。
「裏切ったくせに、あんな·····あんな穏やかに父さんと母さんとリーマスといたのね」
アルバムを勢いよく閉じるとそれをサイドテーブルへと投げたアリアネはベッドに横になった。
そして眠りについた時、彼女は夢を見たのだ。
『済まない、アリアネ·····済まない』
今にも泣き出しそうな声。
謝罪をしているけれど、その声の主は誰なのか分からなかった。
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「ハリー、アリアネ。君たち、ひどい顔だ」
アリアネはあれから、夜中に目が覚めてそれから眠ることが出来なかった。
そのせいで寝不足であり、なんとか寝れたと思い起きてみたら誰もいなくて驚いてしまった。
起きてきてみれば、ハーマイオニーとロンが驚いた顔をしてアリアネとハリーを迎えた。
「みんなどうしたの?」
「いなくなっちゃった!今日が休暇一日目だよ。覚えてるかい?もう昼食時間になるとこだよ。君を起こしに行こうと思ってたところだ」
アリアネは目を擦りながらソファに腰掛ける。
窓の外を見れば薄暗く雪が降っているのが見えた。
「ねえ、本当に2人とも顔色がよくないわ」
「大丈夫」
「私も大丈夫よ」
そう言うが2人の顔色は酷いものだ。
全く大丈夫そうには見えない。
「ハリー、アリアネ。ねえ、聞いて」
「ごめん、ハーマイオニー。今は話したい気分じゃないの。私、ちょっと歩いてくる」
「あ、アリアネ!」
ハーマイオニーが声をかけたが、アリアネは足を止めることなく談話室を出ていった。
アリアネはただ無心で歩いていた。
行先は決めてないが無心で歩いていれば、肩をがっしりと掴まれる。