第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
「まあ、大臣、光栄ですわ」
ピカピカのハイヒールが遠ざかって、また戻ってくる。
その足元を見ながら嫌な動悸がするのをなんとか落ち着かせようとした。
先生方は何時間ぐらいここにいるだろう。
黙って抜け出しているのだから、見つからないようにこっそりとハニーデュークスに戻らないといけない。
「それで、大臣、どうしてこんな片田舎にお出ましになりましたの?」
「ほかでもない、シリウス・ブラックの件でね。ハロウィーンの日に、学校で何が起きこったからは。うすうす聞いているだろうね?」
「噂は確かに耳にしてますわ」
「ハグリッド、あなたはパブ中に、触れ回ったのですか?」
マクゴナガル先生が少し怒っているような声を出しているのが聞こえた。
するもマダム・ロスメルタが囁くように魔法大臣に質問をする。
「大臣、ブラックがまだこのあたりにいるとお考えですの?」
「間違いない」
「吸魂鬼がわたしのパブの中を2度も探し回っていたことをご存知かしら?」
マダム・ロスメルタの声は何処か刺々しい。
吸魂鬼が入ってきたことに怒っているようだ。
「お客様が怖がってみんな出ていってしまいましたわ……大臣、商売あがったりですのよ」
「ロスメルタのママさん。私だって君と同じで、連中が好きなわけじゃない。用心に越したことはないんでね……残念だがしかたがない。……つい先程連中に会った。ダンブルドアに対して猛烈に怒っていてね。──ダンブルドアが城の校内に連中を入れなんいんだ」
「そうすべきですわ。あんな恐ろしいものに周りをうろうろされては、私達は教育ができませんでしょう?」
マクゴナガル先生の言葉も刺々しい。
確かにあんなのが城内にうろついていたら、授業に集中出来ない。
「まったくもってそのとおり!」
フリットウィック先生が、キーキー声の甲高い声を出して叫んだ。
背が低いせいなのか、地面に足が着いていなくてブラブラしているのが少し可愛らしい。
「にもかかわらずだ。連中よりもっとタチの悪いものから我々を護るために連中がここにいるんだ……知ってのとおり、ブラックの力をもってすれば……」
「でもねえ、わたしにはまだ信じられないですわ」
マダム・ロスメルタは考え深げに言う。
頬に手を当てながら、信じられないと言わんばかりの表情を浮かべている。