第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
道を横切りながら、私達は小さな居酒屋に入った。
中は人でごった返していて、賑やかで暖かくて煙草の煙なんかでいっぱい。
カウンターには曲線美な女性が、バーにたむろしている魔法戦士達の相手をしている。
「マダム・ロスメルタだよ。僕が飲み物を買ってこようか?」
ロンは頬をほんの少し赤くさせていた。
そんか彼をジト目で見ながらも、私達は奥の空いている小さなテーブルへと向かう。
暫くすると、ロンが大きなジョッキ三本を持ってやってきた。
「メリー・クリスマス!」
嬉しげなロンが大ジョッキを挙げて、私達も釣られて挙げてからグビッとバタービールを飲む。
すると冷えていた身体がじんわりと温まる。
「美味しい」
「本当だ、美味しい……!」
すると急に風が髪の毛を撫でた。
寒いと思いながら、開いた扉の方へと目をやり、私はバタービールを吹き出しそうになった。
「マクゴナガル先生とフリットウィック先生……!?」
店に入ってきたのはマクゴナガル先生とフリットウィック先生であり、その後ろにはハグリッドがいた。
しかも傍には魔法大臣までいて、私とハリーはどうしようと慌てる。
咄嗟に、ロンとハーマイオニーが私とハリーを机の下に押し込んできた。
その時にバタービールがこぼれてしまい、ポタポタと床に落ちる。
(なんで先生方がここに……?)
じわりと汗が浮かぶ。
すると魔法大臣の足がこちらへと歩いてくるのが見えた。
「モビリアーブス(木よ動け)!」
ハーマイオニーが呪文を唱えると、そばにあったクリスマス・ツリーが浮かび上がり、横にふわふわ漂いながらテーブルの真ん前に着地すると私たちを隠した。
暫くすると、4組の椅子の脚が下げられてマクゴナガル先生達が座る音が聞こえてくる。
「ギリーウォーターのシングルです」
「私です」
マクゴナガル先生が声を発する。
「ホット蜂蜜酒、4ジョッキ分」
「ほい、ロスメルタ」
ハグリッドの声がした。
「アイスさくらんぼシロップソーダ、唐傘飾りつき」
「ムムム」
フリットウィック先生が唇を尖らせているのが見えた。
「それじゃ、大臣は紅い実のラム酒ですね?」
「ありがとうよ、ロメスルタのママさん。君にまた会えてほんとうにうれしいよ。君も一杯やってくれ……こっちに来て一緒に飲まないか?」