第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
少しの興奮と楽しみが渦巻いている時、不意にハリーが考え込む表情を浮かべた。
「ハリー?どうしたの」
「ウィーズリーおじさんが、『脳みそがどこにあるか見えないのに、独りで勝手に考えることができるものは信用してはいけない』って言ってたのを思い出して……」
「あ……じゃあ、コレ……」
地図は独りでに勝手に動いていた。
アーサーおじさんが言う、危険な魔法なものなのかもしれない。
「でも、フレッドとジョージが何年も使っているのに恐ろしいことは起きていなさそうだから大丈夫だよ」
「そうね。あの2人、危険なものなら渡してこないと思うし、説明すると思うしね」
ハリーと私はそう理屈つけた。
そしてハニーデュークス店への秘密の抜け道を指で辿る。
「行こう、アリアネ」
「うん!」
空き教室から出ると、私たちは直ぐに隻眼の魔女の像の影に滑り込む。
それからハリーが広げた地図を見ると、『ハリー・ポッター』と『アリアネ・イリアス・フリート』と名前が浮かび上がっていた。
私たちを表す小さな影が杖のようなもので魔女の像を叩いているように見える。
「叩けばいいのかしら……?」
杖を取りだしてから私は像を数回叩いてみた。
だけど何も起こらない。
「何も起きないね……って、あれ?」
「どうかしたの?」
「僕の影に吹き出しが……」
地図を覗き込めば、ハリーの影と私の影に小さな泡のような吹き出しが浮かんでいた。
その中には言葉が現れる。
「ディセンディウム(降下)……?」
「これを言えってことかな?よし、ディセンディウム(降下)!」
ハリーは石像を叩きながら呪文を唱える。
すると像のコブが割れて、かなり細身の人間が1人通れるくらいの割れ目が現れた。
「これを通るのか……」
「行ってみる?」
「行ってみるしかないだろう。じゃあ僕は先に行くよ」
「わかったわ。後から行くから」
ハリーは割れ目に頭を突っ込んでから滑っていく。
暫くしてから、辺りに人がいないのを確認してから私も中へと頭を突っ込んで滑って行った。
なかなかの距離を滑り落ちていけば、湿っている冷たい地面に落ちた。
「ハリー……?」
「ここにいるよ。ルーモス(光よ)!」
ポッと光が灯り、ハリーの顔が浮かび上がった。
それを見てから私も杖を取り出して、呪文を唱えてから杖に光を灯す。