第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
しかし、それはただの地図じゃない。
地図上を動く小さな点で、一つ一つ細かい文字で名前が書いてあったのだ。
「足跡が動いてる……」
足跡が動き、その横には『ダンブルドア教授』と書かれていて、書斎と記載されている場所を行ったりきたりとしている。
「凄いわ……!」
「だろう?素晴らしい地図だろう、これ」
その地図の中では、私とハリーが行くのを許されなかったホグズミードの地図も乗っていた。
「ホグズミードに直行さ」
フレッドは指で地図をなぞった。
「全部で7つの道がある。とこほがフィルチはそのうち4つを知っている」
フレッドが指で4つを示した。
「しかし、残りの道を知っているのは絶対俺たちだけだ。5階の鏡の裏からの道はやめとけ。俺たちが去年の冬までは使用していたけど、崩れちまった。完全に塞がってる。そこから、こっちの道は誰も使ったことがないと思うな。なにしろ『暴れ柳』がその入口の真上に植わってる。しかし、こっちの道、これはハニーデュークス店の地下室に直行だ。俺たち、この道は何回も使った。それに、もう分かってると思うが、入口はこの部屋のすぐ外、隻眼の魔女ばあさんのコブなんだ」
「ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ、レッドベア」
地図に書かれた文字をジョージは撫でながらため息を吐き出す。
「われわれはこの諸兄にどんなにご恩を受けたことか」
「気高き人々よ。後輩の無法者を助けんがあめ、かくのごとく労を惜しまず」
フレッドの言葉に私は笑いそうになった。
本当にこの地図に恩を感じているようだし、この名前の人々を尊敬しているようだから。
「というわけで、使ったあとは忘れずに消しとけよ」
「じゃないと、誰かに読まれちまう。もう一度地図を軽く叩いて、こう言えよ。『いたずら完了!』。すると地図は消される」
「了解したよ」
「了解したわ」
「それではハリー君、アリアネよ」
フレッドは気味が悪いほどに、パーシーそっくりな言い方をした。
「行動は慎んでくれたまえ」
「ハニーデュークスで会おう」
2人はウィンクすると部屋を出ていった。
そして私とハリーは奇跡とも呼べる地図を眺めながら、部屋の中で突っ立っていた。
「凄いわね、この地図」
「うん、凄いよ。この地図ならフィルチ達に見つからずに、吸魂鬼の傍を通らずにも済むよ」