第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
「ジョージ、説明してやりたまえ」
「よろしい……われわれが1年生だった時のことだ、ハリー、アリアネよ。まだ若くて、疑いを知らず、汚れなきころのことよ──」
ハリーと私は思わず吹いてしまった。
彼らが汚れを知らないころなんてあったとは思えないし、あったとしても赤ちゃんの頃だと思う。
「──まあ、いまの俺たちよりは汚れなきころさ。われわれはフィルチのご厄介になるはめになった」
「『クソ爆弾』を廊下で爆発させたら、なぜか知らんフィルチのご不興を買って」
「やっこさん、俺たちを事務所まで引っ張っていって、脅しはじめたわけだ。例のお定まりの──」
「処罰だぞ」
「腸をえぐるぞ」
「そして、われわれはあることに気づいてしまった。書類棚の引き出しの1つの『没収品・とくに危険』と書いてあるじゃないか」
その言葉にハリーと私はニヤリとした。
「まさか──」
「ジョージがもう1回『クソ爆弾』を爆発さけて気を逸らせている間に、俺が素早く引き出しを開けて、ムンズとつかんだのが──これさ」
「なーに、そんなに悪いことをしたわけじゃないさ」
「フィルチにこれの使い方がわかっていたとは思えないね。でも、たぶんこれが何かは察しがついていたんだろうな。でなきな、没収したりしなかっただろう」
フレッドとジョージは肩を竦めて見せる。
「それじゃ、君達はこれの使い方を知ってるの?」
「ばっちりさ。このかわい子ちゃんが、学校中の先生を束にしたより多くのことを僕たちをさに教えてくれたね」
「僕を焦らしてるんだね」
「へぇ、焦らしてるかい?」
ジョージは杖を取り出すと、羊皮紙に軽く触れてから呪文のような言葉を呟いた。
「われ、ここに誓う。われ、よからぬことを企む者なり」
すると、ジョージの杖の先が触れた所から細いインクの線が蜘蛛の巣のように広がり始める。
線があちこちで繋がったり、交差したりとしていくのを見て、私とハリーは目を見開かせた。
1番てっぺんに、渦巻き形の大きな緑色の文字が浮かび始める。
「ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ、レッドベア。我ら『魔法いたずら仕掛け人』のご用達商人がお届けする自慢の品、忍びの地図……」
何も書いていなかった羊皮紙は、たちまちにホグワーツ城と学校の敷地全体を詳しく記す地図となった。