第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
そして、学期の最後の週末。
ボグズミード行きがまた許されることになり、ハリーと私以外の皆はとても喜んでいた。
「クリスマス・ショッピングが全部あそこで済ませれるわ!パパもママも、ハニーデュークス店の『歯磨き糸ようじ型ミント菓子』がきっと気に入ると思うわ!」
「そんなの売ってるの……?」
私とハリーは相変わらず、ホグズミード行きは許されることがなかった。
ホグズミード行きの土曜の朝。
私とハリーはマントやスカーフを纏ったロンとハーマイオニーを見送った。
「行きたかったわね、ホグズミード」
「そうだね……来年は行けるといいな」
なんて話しながら、グリフィンドール塔へと向かっている時だった。
「ハリー、アリアネ、シーッ!」
4階の廊下の中程で名前を呼ばれた。
何処から呼ばれたのかと、ハリーと2人で視線をさ迷わせていれば、フレッドとジョージが背中にコブのたる隻眼の魔女の像の後ろから顔を覗かせていた。
「何してるのよ、2人とも」
「どうしてホグズミードに行ってないの?」
「行く前に、君達にお祭り気分を分けてあげようかと思って」
「こっちへ来いよ……」
私たちはキョトンとしながらも、フレッド達に連れてられて誰もいない教室へと入った。
そして2人は私たちの方に振り返るとにっこりと笑う。
「ひと足早いクリスマス・プレゼントだ」
「プレゼント?」
フレッドはマントの下からとあるものを取り出してから、机の上に広げて見せた。
大きな四角い、くたびれた羊皮紙だが何も書いていない。
「これ、いったいなんだい?」
「これがどうしたの?」
「これはだね、ハリー、アリアネ。俺たちの成功の秘訣さ」
「君たちにやるのは実におしいぜ。しかし、これが必要なのは俺たちより君たちのほうだって、俺たち、昨日の夜そう決めたんだ」
私とハリーは顔を見合せてから首を傾げた。
いったい、どういうことなのだろうという表情である。
「それに、俺たちはもう暗記してるしな」
「我々は汝達にこれを譲る。俺たちにゃもう必要ないからな」
「古い羊皮紙の切れっ端の、何が僕とアリアネに必要なの?」
「古い羊皮紙の切れっ端だって!」
フレッドはハリーがとんでもない事を言ったと言わんばかりの表情を浮かべると、顔を顰めてから両目を瞑っていた。