第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
口から言葉が出ずに、私は小さく頷いた。
セドリックはそんな私に笑いながら、ちらりと廊下の方へと視線を向ける。
「ライバルは居るけれど……頑張らないとね」
「え?」
「こっちの話だよ。じゃあ、そろそろ君を返さないといけないかな」
セドリックの視線に釣られるように、廊下側の方を見ればコソコソと誰かが隠れていた。
見たことがある髪の毛の色達、見慣れたローブに私はどんどん顔を赤くさせていく。
(もしかして、見られてた……!?)
そこに居るのは間違いなく、ハリー、ロン、ハーマイオニーとリーマスだ。
私はギョッとしながら4人がいる方へと視線を向けていれば、セドリックが私の手を取った。
「僕はそろそろ行くよ。だけど覚えていて欲しい……友人と接するけれど、僕は君を諦めている訳じゃないって」
「う、うん……でも、ひとつ聞いていい?」
「なんだい?」
「一目惚れって言ってたけど……何処で?私、貴方のような人に一目惚れされるような人間じゃないと思うけど」
「そんな事ないさ!君は綺麗なんだ……そうだな、でも一目惚れしたのは笑顔かな」
「笑顔……?」
「うん。組み分け式の時に、君は楽しげにワクワクしたように笑っていた。その笑顔が綺麗で、一目で心が奪われたよ。だからあの時、君に声をかけて貰えて本当にラッキーだったよ」
セドリックは私の手をぎゅっと握った。
優しい手だと思いながら、私は自分の事をそう言われるのは初めてだったからどんどん顔が赤くなっていく。
それに近くにはハリー達が居ることを忘れていた。
「アリアネ、自分がどんなに魅力的なのかわかった方がいい。……さて、本当にそろそろ君を返さないといけないね。ルーピン先生がいる、君の名付け親なんだよね?」
「え、ええ、そうよ」
「じゃあ、怒られる前にここまでにしていないと。じゃあ、次こそ僕は行くよ。……僕が言ったこと、覚えていてね」
そう微笑むとセドリックは歩いていってしまった。
私はセドリックに握られていた手を握りしめながら、熱を帯びている頬に触れる。
(熱い……あんな告白、初めてされた……)
でも、セドリックは私にとっての友人。
その気持ちは変わらないかもしれないが、この先どんな事があるか分からない。
「……ハリー、ロン、ハーマイオニー、リーマス。出てきたらどう?」