第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
ー月曜日ー
ハリーはついに医務室から退院した。
マルフォイが何やら冷やかしてきたけれど、ハリーは特に気にする様子はない。
だがロンがキレてワニの心臓をマルフォイに投げつけてしまったから、セブに50点減点されてしまった。
そして今日は『闇の魔術に対する防衛術』の授業がある日。
ロンはまたセブが授業をしないかを警戒していた。
「アリアネ、ハーマイオニー、教室に誰がいるのか、チェックしてくれないか」
「大丈夫よ」
「リーマスよ」
リーマスは少しくたびれたローブを着込んで、目の下にくまを作っていた。
「リーマス!寝ていなくて平気なの?」
「やあ、アリアネ。もちろん平気だよ」
「でも……」
「大丈夫さ。心配してくれてありがとう」
リーマスは優しく微笑むと私の頭を撫でた。
相変わらず優しい手だけれど、少し細くなって閉まっているのが気になる。
そして、リーマスは他の皆が席に着くと微笑みかけた。
すると生徒の皆はリーマスがいなかった間に、セブがどんなに酷かったのかと不満をぶつけた。
「フェアじゃないよ。代理だったのに、どうして宿題を出すんですか?」
「僕たち、狼人間について何も知らないのに──」
「──羊皮紙2巻なんて!」
「君たち、スネイプ先生に、まだそこは習っていないって、そう言わなかったのかい?」
リーマスは顔を顰めていた。
すると、また皆が不満そうに口々に言う。
「言いました。でもスネイプ先生は、僕たちがとっても遅れてるっておっしゃって━━」
「──耳を貸さないんです」
「──羊皮紙2巻なんです!」
私も顔を顰めながら羊皮紙を撫でた。
言われた通りに、羊皮紙にはまとめているけれど嫌々書いたに過ぎない。
「よろしい。私からスネイプ先生にお話しておこう。レポートは書かなくてよろしい」
その瞬間、生徒たちはとても喜んで叫んでいた。
だけどハーマイオニーだけは『そんなぁ』とがっかりしていた。
そして授業が始まった。
やっぱりリーマスの授業は楽しくて、心地が良い。
リーマスはガラス箱に入った『おいでおいで妖精(ヒンキーパンク)』を持ってきた。
1本足に鬼火こように幽かで儚げな生き物。
「これは旅人を迷わせて沼地に誘う。手にカンテラをぶら下げているのが分かるね?」
リーマスの説明を私たちはノートに綴っていく。