第11章 忍びの地図【アズカバンの囚人】
アリアネとロンとハーマイオニーは顔を見合わせた。
どこか気まずそうにする表情に、ハリーは首を傾げてから3人の様子に不思議そうにした。
「どうしたの?」
「あの……あなたが落ちた時、ニンバスは吹き飛んだの」
「それで?」
「それで、ぶつかったの。ぶつかったのよ。ああ、ハリー……あの『暴れ柳』にぶつかったの」
暴れ柳は校庭の真ん中にある、動き回る凶暴な木のことである。
それにぶつかったと伝えた瞬間、ハリーは目を開かせた。
「それで?」
「ほら、やっぱり『暴れ柳』のことだから。あ。あれって、ぶつかられるのが嫌いだろう?」
「フリットウィック先生が、あなたが気がつくちょっと前に持ってきてくださったわ」
ハーマイオニーが消え入りそうな声で伝えてから、足元のバックを取り上げてからベッドの上に逆さまにした。
するとバラバラと粉々となってしまったニンバスが落ちたのだった。
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ーアリアネ・イリアス・フリートsideー
ハリーはあれから落ち込んでいた。
誰が見ても落ち込んでいて、色んな人がお見舞いに行くけれどそれでも中々元気にはなってくれなかった。
「ハリー」
「アリアネ……」
「糖蜜パイを持ってきたの。貴方も好きだったでしょう?」
「ありがとう……」
丸椅子に腰掛けてから、籠に入れていた糖蜜パイを取り出したからハリーに手渡す。
彼はパイを少しだけ齧ってから、時間をかけて咀嚼をしていた。
この所、ハリーは塞ぎ込んでいる。
クィディッチで負けてしまったことのせいなのだろう。
なんて声をかければいいのかと思いながら、私もパイを齧った。
「実はさ、アリアネ」
「うん?」
「クィディッチの試合中に僕、死神犬を見たんだ」
「……え?」
私は危うくパイを落としそうになった。
「1番上の、誰もいない席にいたんだ。僕、あの犬を見る度に死にかけているんだ」
「……実はね、私も死神犬か分からないけど黒犬を2回も見ているのよ」
「そうなのかい?」
「うん。でも死にかけなかったわ……」
「……でも、やっぱり僕たちには死神犬が取り付いているのかな?」
死神犬(グリム)だと思われるあの黒犬は、とても懐っこくてとても危険だとは思わなかった。
でも本当に私たちに取りついているから、目の前に合われるのかもしれない。